私、演劇部で『四乃森 蒼紫』やってます。

□第二話
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薫サイド


「・・・と、言う訳で、・・・・・ヨロシク。
 こう見えても、一応、女だ・・・・・・」


そう紹介する彼女は充分女らしい。

・・・・・・逆にどこが男らしいの?



第二話『その名も御頭』


「あの、月乃さんて、好きな人とか、・・・いるんですか?」


「あー、月乃でいいよ。敬語もナシで。好きな奴は・・・いないかな。」


「そう・・・なんだ。」


「薫って呼んでいいか?」


「え?うん!勿論!」


月乃・・・彼女が私に優しく頬笑む。


・・・・・・可愛い一面、発見。


「じゃぁ、薫。私はな、好きな奴って言うのは一番遠い話題だ。
 と、言うか色恋沙汰に隙を見せると、今回の演劇は・・・・」


弥生さんが言ってたみたいにすごい・・・


すごい、真面目だ演劇に対して・・・


学の方も、150人位いる中で6位なんて・・・


この人は完璧すぎる。

容姿・頭脳・仕草・性格・・・


「完成しないんだ。私は完璧な奴じゃねェからな。」


もの凄い真剣な眼差しが私を貫いた。


「男役は大変だよ。」


「男役ぅっ?!ほ、本当?!」


「まぁな。なーんか、他の奴らが言うには、

 『美形男子役が一番似合うヤツ。』だと。
 私には、もったいねぇ言葉だが。」


「いやいやいや!月乃は大人っぽいんだから!」


「17歳だぞ。私・・・。部長よりも下だぞ?」


「え?!」


多分、今日一番驚いたことだと思う。


スッと立ち上がった月乃の上には満点の星空に、吸い込むような闇の色をした空。


似合いすぎる・・・・。



「部長ーーーーっ!!
 『るろうに剣心』の原作本!今から練習するから、貸してくれ。
 常に鞄に入れて持ち歩いてんだろ。」


縁側に置いてあった、長刀を月乃は持って、部長曰く、弥生さんのコトを呼ぶ。


「『回天剣舞・六連』練習するの?」


「その前の、『回天剣舞』。小太刀は一本で大丈夫だろ。」



「はい、原作本。
 解んないとこは私が見てるから聞いてね。」


「宜しく頼む。」


こうして、恐らく演劇の練習が幕を開けた。




般若サイド


「解せんな・・・。」


どうしてだろうか?

あの蒼紫様が、一人の女について興味を持つなんて・・・。

申し遅れたが、私の名は般若だ。

今、『神谷道場』と言う所の木の枝にしゃがんでいる。

「蒼紫様が・・・いやでも・・・もしかして、恋か?」


ないだろそれは。

私の頭の中には、私の視界の中に入っている、黒髪が長い女と蒼紫様の姿が思い浮かんだ。


確かに、人を惹かせる魅力は持ち合わせているな・・・。




「んーっと、身体全体を回転させてんのか?コレ。」


「そ。三回転くらいかな?傷は三つだし。」

その女は蒼紫様と同じ小太刀を持っている・・・。


「逆手・・・で、回転・・・やってみるか。」


「月乃は運動神経良いから、できるって。」



「そーかな・・・・?回転できないと思うから、私流でいいか?

「いいよー。剣心役の人が困らなければ。」



名前は月乃で、運動神経がいいのか・・・。

成程・・・。



「・・・・・行くぞ!」

その直後、月乃は、逆手の小太刀を立てた丸太に、


右から横に払うように斬る、右横薙(みぎよこなぎ)。

左からの、左横薙(ほだりよこなぎ)。

そして、身体を低くして高速に回転させると、右横薙をもう一度、丸太に斬りこんだ。



「はい、決め台詞!!」


『゙回天剣舞゙江戸城に忍び込んできた賊を全て始末してきた技だ。』


「はい、オッケェェェェイッ!!!」


「なっ・・・『回天剣舞』は確か蒼紫様の技・・・」


それを、真似した?

で、ではあの女は・・・変態か?

蒼紫様が好き過ぎて真似してしまうほど、好きすぎる・・・変態か?←違います。



「もう、耐えられん・・・!」

私は、即急にその道場を離れた。
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