鳥籠のなかで

□最後の参加者
1ページ/3ページ

話がまとまったところで、タイミングを見計らったように彼は登場してきた。
「シショー、ひどくないですかー?」
「「フラン!?」」
彼の登場に皆驚く。骸は彼がここにいると思っていなかったようだ。
「しょーじき、こんなサビれたカビ臭い所での生活には、ウンザリしてたんでー」
(ミーの尊敬するシショーが言うなら、したがいますが)
フランの幻覚の被り物が普段のリンゴからパイナップルへ変わる。
「...おチビ、本音と建前が逆になってますよ」
骸が額の血管をピクピクさせながら言った。
「あっ、間違えましたー」
少しもわるぶれた風のないフランを見て誰もが、これは手を焼くわけだ、と骸の苦労を察した。

そしてまだ続く。
「ただし条件がありますー。先づ人が多いとこはいやですね。それからまともな食事が出て、できればワフーなとこがいいです」
「贅沢いうんじゃねー!」
獄寺が切れるのも無理はない、というか怒らせるためにフランはやっているのだ。
(山本のとこならどうかな?)
そして、その条件を間に受けて考える綱吉だった。

フランの調子に引っ掻き回され、予想以上に長引いてしまった。
骸がやれやれと言った様子で、騒ぎで床に落ちた契約書を拾い上げた。そして気づく。
「おや?裏にまで記載が...」

「跳ね馬ディーノ!僕はこの合宿は降りさせて頂きます」
・合宿中に負った損傷、施設及び器物の破損については弁償も含め自己負担して頂きます。こちらでは一切の責任を負いません。
・参加者には合宿の安全な運営に尽力して頂きます。こちら側の要請にはできる限り協力して下さい。
「何か問題あるか?」
確かに個人主催の行事なら当然のことに見えなくもない。
しかし...
「ええ、大有りです。参加者メンバーに雲雀恭弥の名前があります。彼がいて安全な運営?冗談じゃありません。いったい、いくら弁償することになるか解ったもんじゃありません」
息を荒くしながら力説する。
「キョウヤは、こっちからちょっかいを出さなきゃ、自分から騒ぎを起こさないだろ」
「親しくもないので知りませんが、こちらが最悪の予想をしても、さらにその斜め上を行くのが彼です」
今までを思い返して、確かにと納得せざるを得ないディーノ。
良くも悪くも雲雀が"想定通り"だった例がない。

「...まぁな。だけどお前、契約破棄するなら最後まで読んでからにしろよ」
「?」
・一度同意しサイン戴いた場合は、上記の条件をいかなる場合にも遵守して頂きます。
・契約を破棄する場合は、違約金として1億円お支払い下さい。
......。

「詐欺です!こんなの悪徳商法以外の何でもありません!!クーリングオフさせて頂きます」
「書いてあるだろ、認めないって」
「訴えますよ」
「いいぜ?法的機関を通して訴えられる身の上ならな」
「うっ、」
「常識だぜ、契約書にしっかり目を通すのは。リボーンからキョウヤを嵌めた奴だって聞いてたが、こんな簡単な手に引っ掛かるとは案外おまえも甘いな」
駆け引きは完全にディーノの勝利だった。
「腐れマフィアが」
今まで、頼りになる兄貴分としてのディーノの顔しか見たことがなかった綱吉達は言葉を失っていた。
(全く容赦しないディーノさんの姿なんて初めて見た)

フランが楽しそうに骸に言った。
「おお、シショー。得意なはずの汚い勝負で完敗ですね」
「黙りなさい、おチビ」
骸が血管を浮かべて、三叉槍をリンゴ頭に突き刺す。
「うわー、負けた腹いせに八当たりでふか。器の小ささが伺えますねー」

「あっ、それと、ミーもその合宿参加してもいいですか?」
「は?」
こうしてただでさえ波乱万丈そうな合宿に新たな火種が加えられた。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ