鳥籠のなかで

□最後の参加者A
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流れで邸に上がることになってしまったが、綱吉は不安で仕方なかった。
「あの、よかったんですか?俺たちお邪魔しちゃって」
雲雀は老婆を睨みつけるとそのまま何処かへ行ってしまった。といってもこの邸内にはいるのだろうが。
「かまいませんよ。何か急ぎの御用事だったのでしょう?」
「えっ、はい。えーと雲雀さんのお祖母さんですか?」
自分達の用事のくだらなさに一瞬言葉に詰まったが、気になっていたことを質問した。
「ふふ、似てますか?」
「えっと、そういうのじゃないんですけど。何か」
「はい、私はただの使用人ですから」
ふふ、とおかしそうに笑って老婆は答える。綱吉はからかわれたのに気づくまで時間を要した。
「ご心配なさらずとも、形はどうであれ、恭弥様は一度よしとしたことを後から蒸し返すような方ではございません。
早くからお電話なさってらしたので、そちらの用事を優先したのでしょう」

綱吉が会話を必死に続ける一方で、ディーノは邸の中を物珍しそうに見物しながら後をついて歩いていた。
そしてあることに気づく。
「おい、ツナ。フランがいつの間にかいなくなってるぞ」
「えっ?」
2人は顔を見合わせ、そろって嫌な予感を感じたことを確認した。

「電話終わりましたかー」
「あぁ、待たせたね。何の用?」
驚かせてやろうと急に声をかけたフランだが、どうやら気づかれていたようだ。
「ミー、ここに住みたいんですけど」
「?」
「いろいろ事情がありましてー、必要なら説明しますけど?」
といいつつも如何にも面倒くさいといった表情のフラン。その点においては雲雀も同意見だった。
「いいよ、面倒くさいから」
「おー、さすがに心が広いですね。じゃ、よろしくお願いしますー」
「は?」
雲雀の「(説明は)いいよ」をここに住むことに対する、「いいよ」ととったのだ。もちろん分かった上で。

客間に通された綱吉とディーノは慣れない正座に、早くも悲鳴を上げていた。
体面的な何かで正座をしてしまったことを後悔している。
「ご両親は何をされてるんですか?」
今まで避けていた話題にディーノが踏み込んだ。正直聞きたくない気もするが、興味もあるのは確かだ。
「御在宅ではございませんので、お気になさらずとも大丈夫ですよ」
明らかにそれ以上踏み込むな、と警告するような返答。それでも保たれたままの笑顔が逆に怖かった。

「そうですか。いや、あまりに早くお邪魔したのでご家族にも迷惑だったんじゃないかと心配だったんですよ」
さすがにディーノがうまく答える。2人は空気が和らいだのを感じた。
「お気遣いありがとうございます。少しこちらでくつろいでいらして下さい。今朝食をお持ちします」
「そんな、申し訳ないです」
慌てて綱吉が答える。ディーノは接待されなれているのからか、断ろうとしなかったためだ。
「構いませんよ、朝食まだなのでしょう?先ほどお腹の虫が泣いてましたよ」
そう言われて綱吉は赤面してしまい、それ以上言葉を紡げなかった。完全に子供扱いされている。
「それに朝食ができる頃には、恭弥様もお戻りになるでしょう」
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