鳥籠のなかで

□ゲームスタート
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平穏だった。普通とは少し異なるかもしれない。が、自分たちにしてみればいたって無事で。
それは、あまりに突然の崩壊だった。

フランは窓から空を見ていた。もうすぐ日の出の時間だ。別に朝日が好きなわけではない。冬のお寝坊な朝がやってくるのを待っていた。
時計は7:00を回ろうとしているのに、まだ日は昇らない。そこそこ騒がしいバスの中を見回す。理由の無い、またあまりに小さいその不安を共有している人は、少なくともバスの中にはいなかった。

並盛町を離れ、山間部へと向かうバス。雲雀もまた、明け方にも関わらず暗く重い空を眺めていた。
__冬はつとめて。枕草子の一節を思い出しあまり共感できないとぼんやり考えていた。
(冬は夜空の方が綺麗だと思うけど)
結局はどうでもいい、と結論づけるものの、言い知れない、微かな‘‘嫌な感じ’’を消すことはできなかった。



バスのスピードがだんだん上がる。例の合宿所というのが山の中である以上、上り下りが多くなるのは仕方が無い。が、スピードを出しすぎている。
最初に異変に気付いたのは、バスの上にいる雲雀だった。
文字通り風当たりが強くなるのを感じたためである。バスの進行方向を確認した時にはもう、ただの‘‘嫌な感じ”では無くなっていた。
次いで気付いたのはフラン、そして骸だった。
「ししょー、何でこのバスこんなに急いでるんですか?」
あくまで通常通りの気の抜けた話し方をしようとしているが、どこか緊張しているのが骸には伝わった。
遠足気分で盛り上がるバスの中。フランの声がなければ、賑やかで和やかな空気から現実に戻れていなかっただろう。随分ぬるま湯に浸かりきってしまったことを嫌でも自覚させられた。

骸が立ち上がったのと、ディーノが異変に気付いたのはほぼ同時、そして一瞬遅れてバスのフロントガラスが割れ、飛び散った。
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