鳥籠のなかで

□1日目 〜開演〜
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*ここからはディーノ視点です。

「随分時間がかかりましたね」
「何もしなかったのは君も同じだろ」
会話が遠いところで聞こえる。
「で、どうするつもりですか?」
「そこの端末に1度目を通しなよ」
「ええ、後でそうします」

キョウヤが‘あの’扉の方向に向かう。やめろ、開けるな!
「どこ行くんだ?」
我ながら情けない声が出る。聞かなくてもわかってるだろ。わざわざ言わせるなよ。
「赤ん坊、あのままにはしておけない」
答えたキョウヤの感情を読み取る余裕は俺にはない。それでも、その言葉にハッとさせられたのが何人かいたのは確かだ。だが…
「…そうだな、」
「僕一人でやれるから」
いつもなら子供じみて聞こえる言葉に、どうしようもなく縋りたくなる。俺は見たくない。リボーンの…
君も来なくていいよ、と骸を鬱陶しそうに追っ払っている。ホントお前らしいよな。僅かに笑が自分からこぼれたのに驚いた。人間どんな状況でも笑うことはできるらしい。それでも、その笑みは立ち上がるための気力にはなれず、情けない自分への嘲笑へと変わった。

*再び骸視点

扉はどうやらロックが解除されたようです。ショックで座り込んでいるのかと思えば、端末に送られてきたメッセージを読んでいただけですか。
「あなたに感情はないんですか」
扉を開く彼に言う。答えはない。
単なる興味で、非難や嫌味のつもりはなかったのですが。
…。
覚悟はしていましたがやはり、というやつですね。
人の焼死体。焼け焦げた顔には苦悶の表情が刻まれている。恐らくもっと早く殺せたはずだ。わざと時間をかけた。人の焼けた臭いに吐き気がこみ上げる。姿が赤子なのが余計に性質が悪い。
思わず目を逸らした僕を余所に彼は忌まわしい電気椅子にまっすぐ歩み寄り、アルコバレーノを拘束しているベルトを外した。彼の服に血やら体液やらが付着する。

彼はさらに奥へ進み扉を開けた。奥にまた扉があったことに今更ながら気づく。彼は白くちょうど大人一人分くらいの大きさの布袋を手に戻ってきた。そしてアルコバレーノの死体を抱き上げると、その袋に隠してしまった。
そして再びその袋を抱き上げて奥の部屋へ入っていく。奥は霊安室か何かなのでしょう。
彼に続いて部屋に入ると、思わず背筋がゾクリとした。寒い、いや冷たい、ですね。死体が腐らないようにという、たいそう喜ばしくない御心遣い。死体を安置するための棚は二つ。ご丁寧に6段のものと7段ものが一つずつ。僕等全員入れるようにということでしょうか、しかし最後の一人は死体になった後で、自らここまで来て袋に、それから棚に入らなくてらならないことになりますが。
このゲームの運営側が片付けてくれるんですかね。

下らないことを考えている間に、彼はアルコバレーノの死体を片付けてしまった。そう‘‘片付けた”という言葉がぴったりなほど淡々と。
何故ですか、あなたは今限りなく''死”に近いものに触れていたはずだ。なのになぜ冷然としていられる?なぜ汚れない、なぜ穢れない。…かつての僕のように、なぜ堕ちない?

彼は手を合わせることも、まして十字を切って祈ることもせず再び扉に手をかけてしまいました。
日本人には信仰心がないというのは本当のようですね。
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