無双

□*蜘蛛の糸*(甘陸)
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幼い頃、攻め込んで来る孫呉の、兵に、将に、いったい何故こうなったのかと状況も理解しきれぬまま目の前で父と母を失った。
生き残った私と弟を引き取ってくれた伯父、陸康は怒りと悲しみに歪んだ顔で無理に笑顔を見せてこう言ったのだ。
「もう、何も恐がらなくていい」
と‥。
その瞳がやけにギラついているように見えてしまい、私はまだ小さな弟を震える腕で抱き締めた。


しばしの間、邸で平穏に過ごしていたが、ある日、伯父が私の室に訪れた。
「お前に教えておきたい事がある」
伯父は一言そう洩らすと私の身体を寝台へ押し倒した。訳も分からず震える私の頭を撫で、小さく微笑んだ伯父の瞳は、以前一度だけ目にした事のある獣のようにギラついたあの瞳だった。
今思えばあの時からすべての歯車は崩れ始めていたのかもしれない。



男と肌を交える事を快楽に思うようになったのは、まだ私がこの行為の、名も、意味も分からぬほど幼い頃。







─ 人間とは…
何と醜く、愚かで、
浅はかなものか ─‥








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