無双

□*恋の方程式*
1ページ/14ページ

甘寧が遠征から久方ぶりに自軍に帰還した夜の事。
酒好きの君主、孫権が遠征から無事に帰還した武将達に労いの言葉をかけようと宴を開いた。
と言っても、ただ酒を飲んで騒ぎたいというのが本心なのであろうが。






「皆、今回の遠征、実にご苦労であった!この勢いで孫呉の敷地を肥やし続け、皆で孫呉を天下へと導こうではないか!」

手にした杯を高らかに掲げ意気込む孫権に、辺り一帯から聞こえる喝采の声。
その喝采に孫権は満足気に微笑むと手にしていた杯に口を付け、一気に杯の中の酒を呑み干した。
そして、それを合図に皆それぞれに杯に口を付け始める。




宴が開かれてからまだ数十分しか達ていないというのにも関わらず、随分と盛り上がりを見せる呉の将達に甘寧は、お気楽な国だな、などと思いつつ思わず笑みを盛らしてしまう。
遠征から帰還した中の一人だった甘寧は先程まで沢山の将や兵に囲まれて杯を交わし合っていたが、時間が立つに連れてそのほとぼりも冷め、甘寧を取り囲んでいた将達が散り散りに去っていく。そしてその機会を待ってましたと言わんばかりに凌統が甘寧の隣の席へと腰を下ろした。


「よ、遠征ご苦労さんだったな」
「あぁ、凌統か。あんなもん大した事ねぇよ。まだまだ暴れたりねぇくらいだぜ」
「ははっ、変わらないな。
でもあんたのその自信家なとこも案外好きだぜ」
「だろ?でもお前に好かれても微妙だな‥」
「なんだと?誉めてやってんだから少しは素直に喜べよ」


杯を口に運びつつ互いに笑みを浮かべ合う甘寧と凌統。
空になった杯に酒を注ぎながら何気なしに凌統の横の席へと視線を移すと、そこには見たことのない小柄な少年の姿があった。
甘寧と目が合い、綺麗な笑顔を浮かべながら小さく会釈する少年。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ