無双

□強く儚い者たち
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騒めく虫の鳴き声と、ジリジリと肌を焼き付けるような陽の光に俺の隣で地に腰を掛けていた甘寧が、あからさまに不機嫌そうな声を上げた。




「あっちぃな。こんなにクソ暑いんじゃ訓練中にくたばるっつーんだよ」

「まぁ、そう愚痴りなさんなって。気温だけは愚痴ってどうにかなるもんじゃないだろ?」

「うっせぇな凌統。そんな事なんざ言われなくても分かってんだよ」



ったく、毎度毎度の事ながら、こいつのこの小憎たらしい性格は何とかならないもんかね‥。


顔をモロにしかめながら反論してくる甘寧に俺の顔も自然としかまる。

ムカついた腹いせに暑がってダウン寸前の甘寧に手を延ばし、思いっきり抱きつくと、甘寧は今にもブチ切れそうなほど声を荒げ、俺を引き剥がそうと腕を俺の背中に回して衣服を引っ張った。




「っあぁ!!暑いって言ってんだろうが!離れろ!!」

「嫌だね。ていうかアンタさぁ、軍で一番涼しそうな格好してるくせにそんなに暑がんないでくんない?皆ちゃんと服着てこの気候に耐えてるんだからさ」

「うるせぇな。服の事なんざどうでもいいんだよ。とにかく離れやがれ」

「はいはい。そんなカッカしなさんなって。そんなに怒ってると体温上がるぜ?」

「テメェのせいだろが!」


軽く笑い飛ばし、甘寧に回していた腕を離す俺に、よっぽど抱きつかれた事が嫌だったのか、誰が見ても不機嫌だと分かる程に眉間に皺を寄せ、話かけるなオーラを全身から醸し出す甘寧。


…たく、本当に短気だな。



そんな事をポツリと考えて呆れ顔になっていると、どこからか陸遜の声が聞こえてくる。
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