呪泉郷

□王様ゲームA
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翌日



机に突っ伏したままの状態で目が覚めたエースはキョロキョロと部屋を見渡す。
散らばっていた酒瓶や缶などは綺麗にゴミ袋に纏められていて、肩には毛布が掛けられていた。


「俺…いつの間に寝ちまったんだろ…?」

若干痛む頭を押さえ、記憶の糸を辿るが曇り掛かっていて、どうにも思い出せない。
それほど強くもない酒を、普段から笊のように飲む連中と浴びるように飲んだのだから当たり前と言ったら当たり前なのだろうけど。

今頃サボも二日酔いかな。

そんな事をぼんやりと思って時計に目を向けると、既に大学の時間は過ぎておりバイトに向かわなければいけない時間になっていた。

「……どんだけ寝るんだよ俺…」


自分の睡眠能力に呆れ果てながら、エースは身支度を整えてバイト先へと脚を運んだ。





















「おはようございまーす」

赤らかと光る看板を潜り抜け、スタッフルームへ入ると休憩中のサッチが椅子に座って弁当を食べている途中だった。
部屋の中へ入ってきたエースと目が合うと、サッチはにんまりと笑う。


「よう、体調はどうよ?」

「少し頭が痛いくらいで全然大丈夫だ。大学は寝過ごしちまったけどな」

「お前なぁ、どれだけ寝れば気がすむんだよ…」

「はは、どうでもいいけど俺昨日いつの間に寝たんだ?」

「覚えてないのか?」

「覚えてねぇ」


その言葉にサッチはニヤリと口角を上げた。
エースが酒が強くないのは知っていたが、自ら忘れてくれているとは何という好都合だ。


緩む表情を隠そうともせずにサッチはエースに向かって口を開いた。


「お前さ、王様ゲームしたの覚えてるか?」

「王様ゲーム?あー…確かマルコが肉焼いてたな」

「その後は?」

「その後…?」


眉を潜めて考え混んでしまったエースにサッチはクックと笑う。


「お前、マルコとキスしてたぜ」

「キスっ!?なんでだよ!?」

「命令されたからに決まってんだろ」

「そ、そっか…」

「でな、昨日やりきれなかった命令がお前の分沢山残ってるからよ!」

にか、と笑ってそう告げるとエースは目をこれでもか、というくらい真ん丸にした。


「え?残ってるってどういう事だよ!?」

「お前が酔っ払って俺の分は明日全部やるって言ったんだろ?」

「マジか…。つか素面で王様ゲームの命令内容とか勘弁してくれよ…」

「ははは、恨むなら酔いすぎた自分を恨むんだな!まぁ取り敢えず…」


ガックリと肩を落としているエースを自分の方へ引き寄せると、サッチはエースの耳朶をペロリと舐めた。
突然の出来事にエースが石のように固まる。


「ぎゃはは!童貞でも有るまいし、こんな事で固まるんじゃねぇよ」

「〜〜な、ばっ、バカ野郎!!男にこんな事されたら誰だって硬直するだろ!」

「ははははは、まぁこんな感じのがてんこ盛りに残ってるからよ。男なら腹括って罰ゲームされろよ」


そう楽しそうに笑うサッチにエースは再度肩を落とし、深い溜め息を吐いてスタッフルームを後にした。




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