無双
□*酔狂*
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もんもんとそんな事を考え、陸遜を見つめながら動きを停止させている俺にまたも子龍が首を傾げさせた。
「孟起?」
「あ、いや、何でもない。そんな事よりこいつ、どうする?」
俺の問い掛けに子龍は少し困った顔をする。
「ん〜。どうしようか?このまま此処に置いていくわけにもいかないしな‥。とりあえず軍に連れて帰りましょうか?」
「そうだな」
子龍の意見に軽く頷くと、馬に陸遜を乗せ後ろから抱き抱えるようにして馬を走らせ始めた。
「なぁ子龍。こいつ、燭(ショク)に連れて行ったらその後どうなるんだろうな」
「どうでしょうね。私には諸葛亮殿のお考えになる事は分かりませんが、まぁ処刑される事はまず無いでしょうね」
「そうか?奴の事だから涼しい顔しながら「処刑してしまいましょう」とか言いそうじゃないか?」
「敵意のない者に手は出しませんよ。無意味に陸遜殿を殺めれば呉が攻めてくるのは一目瞭然ですし」
子龍の言葉に思わず安堵の息を洩らしてしまう。
こんな少女のように可愛らしい少年が処刑される所などはっきり言って見たくない。
「おや?もしかして陸遜殿の事、気にいったんですか?」
安堵の息をついた俺を見て子龍が以外そうに口を開く。それを首をブンブンと振って否定する俺。
「そ、そんな事ないぞ!いくら顔が可愛くても敵は敵だ!気にいるわけがないだろう!?」
慌てて否定する俺が可笑しかったのか子龍は「はいはい」と言いながらクスクスと笑った。
ぐ‥っ!図星なだけにあまり反論できない‥。
今だ緩ませた表情を崩さないでいる子龍を小さく睨み付けると子龍は更に顔を緩ませる。
なんかもうすっかりコイツのペースだな‥。
「俺がこいつの事を気にいっていようが何だろうがどうでもいいだろう!?早く城に戻るぞ!」
「ははは、そんなに怒らないで下さいよ」
これ以上からかわれたくない俺は馬の速度を早め、急ぎ燭へと向かうのだった。
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