ONE PIECE

□痴漢電車
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「いってきます」






短くそう呟くとエースは扉を閉め、通学の為に使用する駅へと脚を向けた。

相変わらず混雑している駅構内に小さく溜息を吐き電車を待つ。
到着した電車が既に満員な事に再度大きく溜息を吐く。
毎日の事なので満員なのは分かっている。
分かってはいるのだが溜息をつかずにはいられない。

既に満員の電車の中に無理矢理押し込まれていく人の群れ。
ぎゅうぎゅうと押し潰される不快感に眉間の皺を深めながら早く目的の駅に着く事をひたすらに待っていると、ふと尻の辺りに違和感を覚えた。
これだけ満員ならば荷物や腕などが当たってしまっても仕方がないと思い気にせずにいると、今度はその触れていただけの感覚が、まるで尻を撫で回すような感触に変わる。



「………っ!」



己の尻を撫で回す感触に思わず顔をしかめさせるエース。
自分は男で、見渡す限りでは周りに男しかいない。
といっても首を軽く動かす事が出来る程度なので核心は持てないのだが。


(おいおいおい、こんな固ぇ尻の女なんていねぇだろ…)


明らかに男と分かる尻でも撫で回す変態野郎って居るんだな。
尻ならなんでもいいのかよ、っとどこか他人事のようにそんな事を思う。


好き勝手に撫で回されるのは気に喰わないが、身動きがとれない為、今の状況をどうする事もできない。かといって男の自分が痴漢だと騒ぐ訳にもいかず、エースは首を擡げさせながら早く駅に着けよ、と脳裏で思い舌打ちをした。




『〜〇〇駅。〜〇〇駅』



ようやく目的の駅にたどり着き、まるで雪崩のように人の群れが駅へと流れ出る。
エースは小さく安堵の息を漏らし、その雪崩の群れと共に駅へと流れ出た。




(ぶっ飛ばしてやりてぇけど人が多すぎて分かんねぇな)



苛つく気持ちを押さえ、学校までの道のりを急ぐ。

―たまたま変態野郎が同じ電車だっただけ―

そう楽観思していた事が、これから最悪の事態を招く事も知らずに。














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