ONE PIECE

□悪魔の小瓶
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ポカポカと暖かい気候の中、頬を撫でる風が心地いい。

そんなゆったりとした俺の気分をぶち壊したのは甲伴から聞こえてきた野郎だらけの笑い声だった。















悪魔の小瓶












「何騒いでんだ?」


端から見ても興奮しているのが分かるくらい盛り上がっているその場所へと脚を向けて問い掛けると、その中心にいたサッチは俺の顔を見るなりニヤリと唇に円を描いた。


「おぅ、エースか。スゲェもん手に入れたぞ」

「スゲェもん?」

「ああ。スゲェもんだ」


頷いてまたニヤリと笑うサッチの手の平に視線を向ける。
その手の内には液体の入った小瓶が握られていた。


「スゲェってその液体がか?」

「そうだ」

「?」


何が凄いのか分からずに小首を傾げる俺にクックと笑みを漏らすサッチ。


「聞いて驚けよ。この液体はな、男を女に変えちまう薬だ」

「はぁ?そんな薬あんのか?」

「なんでも悪魔の実を搾って作った薬らしいぜ」




う、嘘くせぇ…。




「サッチ、あんた絶対騙されてるよ」


俺の溜息混じりの言葉にサッチは口角を上げる。


「そう思うか?」

「当たり前だろ。そんな薬、見たことも聞いたこともねぇ」

「はは、だろうな。じゃあお前これ飲んでみろよ」

「はぁ?嫌だよ。なんで俺が…」

「偽物だと思うんだろ?偽物だったら飲んだって問題ないじゃねぇか」



そう言って不敵に笑う目の前のリーゼント頭のオッサンに俺は思わずポカンと口を開けて阿呆面を向けてしまう。


「いや、確かに偽物だとは思うけどよ…」

「オッケー。じゃあ何の問題もないな。ほら、飲んでみな」


そう言ってポイっと手元に投げられた小瓶をキャッチする。
瓶の中で揺らめいている紫色の液体が不気味で仕方ない。




……超、飲みたくねぇ。




だいたい紫の液体って何だよ。
もうちっとマシな着色料使えよ。

本気で飲みたくない俺は自分の手の内にある突っ込み所満載な小瓶とにらめっこをしてしまう。
そんな俺の様子に相変わらずニヤニヤし続けながらサッチが大袈裟に肩をすくめさせた。


「飲めねぇのか?」

「………」

「なんだ、結局ビビってんじゃねぇか。あーあ、天下の二番隊隊長様ともあろうお方が偽物だと思った薬にビビってんじゃねぇよ。ガッカリだぜ」

「ビビってなんかねぇ!薬は偽物だと思うけどよ、死んじまったらあんたどう責任取ってくれんだ?」

「ぜってぇ死なねぇから大丈夫だ。もし死んじまったら俺も一緒に死んでやるから安心しろ」

「バッカじゃねぇの?あんたと心中なんて真っ平ごめんだぜ」

「ははは、どうでもいいから腹括って早く飲め。それとも部下の前で尻尾巻いて逃げるか?」




……このフランスパンめ。


いつの間にやら俺達の周りを囲むくらい増えたギャラリーに俺は軽くサッチを睨みつけ、一気に小瓶の中身を口にした。





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