呪泉郷

□許嫁の存在を知ったエース
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「船長!おかえりなさい!って…誰ですその女と……豚?」


満面の笑顔で出迎えてきた船員達は、俺とサボを見るなり不思議そうに首を傾げさせた。
そりゃそうだろう。
船には母さん――ルージュも乗っていて、親父は母さんが船に乗っている時は絶対に女に手を出さない。
本当に中の良い夫婦だと思うし、何より親父は母さんにベタ惚れだ。
そんな親父が船に女を連れて来たのだから驚かない筈がないんだ。

サボは豚呼ばわりされたのが心外だったのかブーブーと鼻息荒く怒りを露にしてる。悲しいことにその声は豚そのものなんだけど…。


「ああ、この女は俺の息子のエースだ」

「はあ…エース…。エースって…ええぇぇっ!!?」

「おう、呪泉郷に行って突き落としてきた」

「呪泉郷って…船長!冗談だと思ってたら本当にやっちまったんですか!?あれ?じゃあその豚は…」

「迎えにきたサボだ。色々あって突き落としちまった」

「「「えええぇぇっっ!!??」」」


「サボを戻すお湯を沸かして来てくれ」という親父の言葉に慌ててお湯を沸かしに行く船員。

それをぼんやりと眺めながら、親父に疑問を口にする。


「なあ…なんであんな所に落としたんだよ…」

「ん?ああ、許嫁だ」

「は?」

「白髭は知ってるよな?あれは戦友みたいなもんでな、お前が産まれる前に、うちの子供と白ひげの子供を結婚させる約束をしたんだ」

「はあ?」

「で、お前もそろそろ良い年になったから顔合わせを、と思って白ひげに連絡したら向こうは男しかいないんだと。じゃあ仕方ないってことでわざわざお前を呪泉郷に突き落としたってわけだ」


いや〜どの泉が女の呪いか調べるの苦労したぞ。
とか笑顔で抜かす親父に、俺の肩がワナワナと震える。


「ふっっざけんなあぁあぁぁっ!!!」


あまりの怒りに胸に抱いたままだったサボを親父に向かってぶん投げた。

ブーーッ!とかいう鳴き声と一緒に親父の顔面にぶつかるサボ。
ははは!
ざまぁみやがれ!

親父はそのままよろけて後ろでお湯を用意してた船員に激突した。
船員の持ってたお湯が親父ごとサボにかかって、モクモクと上がる湯気と共に人間に戻る。


「エース!頭にきたからって俺を投げるなよ!」

「あはは、ごめん、ごめん!」

「あ!エース」

「なに?」

「許嫁の件、俺が絶対阻止してやるからな!」


いつでもかけられるようにお湯用意しておいてやるよ!と力強く言うサボに俺は満面の笑顔で頷いた。









 

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