無双
□*やわらかな傷跡*(甘陸前提曹陸)
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甘寧が曹操に補縛されたと知ったのは、戦状が随分と有利になって来た時の事。
「陸遜!甘寧がっ、甘寧が曹操に捕らえられてしまった!!」
「甘寧殿が‥!?」
走って来たのか多少息を乱しながら状況を伝えてくる孫権に、陸遜の表情に青みがさしていく。
「孫権様!何か甘寧殿を取り戻す対策は‥曹操は何か交換条件を出して来ていたりはしていないのですか!?」
「それが…」
言いずらそうに表情を曇らせる孫権に、陸遜は眉間に皺を寄せ、真っすぐに孫権を見つめた。
「何かあるのですね?
曹操は何と?」
「あるにはあるのだが…」
「孫権様っ!!」
口ごもる孫権に陸遜が痺れを切らせたように声を荒げる。
すると孫権は観念したように口を開いた。
「実はな‥曹操はお前を魏城に連れて来いと‥」
「私を…?いったい何の為に‥?」
「分からん‥。無理には行かせたくない。行くかどうかはお前が決めるんだ」
孫権の言葉に陸遜はきっぱりと言い放った。
「行きます。あの人を傷つける事は私が許さない」
「陸遜‥。何の為に曹操がお前を欲してしるのかは分からんが、もしかしたら‥無事には帰って来れぬかもやしれんのだぞ?それでも行くと言うのか?」
「そんな事はもう十二分に承知しております。それでも‥私は甘寧殿を連れ戻したいのです‥」
「‥陸遜…」
「すぐに魏に向かいます。曹操にはそのように伝えて下さい」
「…分かった。お前が無事に帰って来る事を祈っているぞ」
心配そうにしている孫権に向かって一礼すると、馬に又借り、すぐさま魏へと足を運ぶ。