無双

□*酔狂*
1ページ/18ページ

ぽかぽかと気持ちのいい小春日和のときの事。
俺と子龍は久方ぶりに休日が合い、共に遠乗りを楽しんでいた。
泉がある森林に寄り、馬を少し休ませようとした時、ふと泉の近くに赤い何かが視線にとまる。


なんだあれは…?


多少警戒しながらもその赤い物に近づく。

「…人…か…?」

遠目では分からなかったが近づいて見てみると確かに人だ。
人が倒れていると分かった俺は慌ててその倒れている人物を抱き起こした。
長い睫毛が印象的な少女のような少年だった。

「おい!大丈夫か!?しっかりしろ!」

頬を軽く叩くが反応はなく、小さく呼吸を繰り返す呼吸音だけが微かに聞こえる。随分と深く気を失っているようだ。

「孟起?どうかしたのか?」

俺の様子に気が付いた子龍が小首を傾げながら近づいてくる。

「人が泉の傍で倒れていてな…」
「人…?…その子は…」

少年の顔を覗きこんだ子龍が顔をしかめる。
いったいどうしたというのか‥?

「子龍?どうした?」

俺の問い掛けに子龍は相変わらず眉間に皺を寄せたまま、ゆっくりと口を開く。

「孟起‥その人‥おそらく呉の軍師の陸遜ですよ」
「呉の軍師!?」

子龍の言葉にぶったまげる俺。
呉の軍師には随分と火計で悩まされた記憶がある。火攻めばかりしてくるから人を燃やし殺す事の好きなもっと変人ぽい奴を想像していたのだが‥こんな顔の綺麗な少年だったとは‥。
目を覚まし口を開いたらやはり性悪なのだろうか?
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ