無双

□*童歌*(甘陸)
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朝目覚めると、いつもよりも柔らかな感触が甘寧の腕に触れた。



(あれ…?女なんて抱いてたっけな…?)



腕に当たる柔らかい感触にぼんやりとそんな事を思い、閉じていた目蓋をゆっくりと開く。
開いた瞳の先にはスースーと小さく寝息をたてながら眠る顔立ちの整った可愛らしい少女の姿が。


(うわ‥可愛いな‥。)


純粋に目の前で眠っている少女が可愛いと思い、しばらくの間その寝顔に見入っていたが、ふとある事に気が付く。


昨晩、自分が腕の中に抱いて眠ったのは陸遜だったと。



辺りを視線を動かして見渡してみるが、陸遜の姿は見当たらず、寝室の中にいるのは自分とこの少女だけのようだ。

訳が分からず、考えたところで何の解決にもならないと悟った甘寧は自分の隣で今だ眠りについている少女の身体を揺すった。

「おい、気持ちよさそうに寝てるとこ悪いが起きてくれねーか?」

揺すった際に少女に掛けられていた毛布がずれ落ち、綺麗な肌が顔を出す。
その身体を見て甘寧は思わず鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしてしまう。


「お、おとこ!?」


自分が女と思いこんでいた少女の身体には胸の膨らみは見受けられず、表になった薄い胸板が男だという事を物語っていた。


「って、驚いてる場合じゃねぇか‥。おい、起きろって」

男だろうが女だろうが、この状況ではどうでもいい事。そう思った甘寧は再び目の前にいる少年の身体を揺すり始める。

そして揺すり続けること数十秒。
少年は瞑っていた瞳をゆっくりと開いた。


「ぁ‥おはようございます、興覇殿‥」

「あぁ、おはようさん‥って、はぁ!?」


身知らぬ少年が隣で寝ていただけでも意味が分からないのに、字まで呼ばれて露骨に顔をしかめる甘寧。
そんな甘寧の様子に少年はキョトンとした表情を浮かべた。

「興覇殿…?どうかしたんですか?」
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