呪泉郷

□着替え(エース)
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「いーやーだーーッ!」



俺は今、親父によって用意された女物のワンピースを前に、顔面を真っ青にさせて柱にしがみついてる。
目の前には困り顔の母さんと眉を吊り上げてる親父がいる。


「嫌だ!誰がそんなもん着るか!!」

「エース!早くしないと白ひげの船が来るぞ!」

「うるせえ!嫌なもんは嫌だ!そんなもん着るくらいなら素っ裸の方がまだマシだ!!」


もう何時間も口論しあってて、本当に時間がないのか親父の眉間の皺がどんどん深くなっていく。


「エース!いいから早く着替えろ!!」

「ふざけんな!触んなよクソ親父!!俺の人生は俺が決める!誰が勝手に決められた結婚相手なんかに会うかッ!」

「エース!!」

「なんだよ!文句があるならかかって来やがれ!」


怒りのあまりに制御しきれなくなった炎が体からゆらゆらと上がり始めた。
焦る親父と驚く母さんに、不味いな、と思うが体から溢れ出す炎は言うことを聞かない。
それくらい今の俺は頭に血が登ってた。

このままじゃ船を燃やしちまう。
いっそのこと窓から海に落ちちまおうか。
そんな事を考えていると、ガチャリと部屋の扉が開いた。


「船長、白ひげが来たぞ」


ひょっこり顔を出したのは俺の最愛の弟ルフィ。
ルフィは俺を見るなり、ニカリと笑った。


「エースまだ着替えてないのか」

「おう、絶対着替えねぇ」

「そうか。じゃあそのままでいいじゃねェか」


ルフィの言葉に親父は深い溜息を漏らす。


「あのなルフィ。シャツにハーフパンツじゃ白ひげに失礼だろ」

「え?なんでだ?何着てたってエースはエースだろ?」

キョトンとしながらそう言ったルフィの言葉に、親父は呆れ顔を、母さんはニコやかに笑う。


「あなた、もういいじゃない」

「まあ…ルージュがそう言うなら…」

「そうだぞ。大体もう来ちまってんだし、早く甲板行った方がいいって」


そう言ってシシシと笑うルフィに、俺も口角を上げると、そのまま部屋から飛び出した。




勿論、白ひげに会うつもりのない俺は、甲板ではなく船倉へ向かう。
身を潜めるには丁度いいし、今日は何の荷物もなかった筈だ。


誰が親父の言いなりなんかになるか。


そう心の中で悪態付いて俺は船倉に入ると荷物の間に身を潜めさせた。











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