呪泉郷
□出会い(マルコ)
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めんどくせェ。
俺は今、ロジャーの船の甲板で、ロジャーの娘が来るのを待ってる。
ルフィとやらが呼びに行ってから、かれこれ三十分はたってる筈だ。
到着してから十分程した時、あいつはどうしたと騒ぎ始めた船員達は、三十分過ぎた今では大騒ぎしながらロジャーの娘を探し回ってる。
「そっちいたか!?」
「駄目だ!いねぇ!」
「あいつ海に飛び込んだんじゃねェだろうな!?」
「いやいや!死んじまうからそれはないだろ!ストライカーはあるから海には出てない筈だ!とにかく探せっ!」
慌てて走り回る船員をボンヤリと見つめながら溜息を付いていると、「見つけたぞーー!」という声と共に、喜びに沸き上がる歓喜の声。
声のする方に視線を向けると、そこにはガタイのいい男に羽交い締めにされている女の姿があった。
「ぐっあぁ!離せよっ!ぶっ殺すぞ!!」
「いててて!エース!暴れんなよ!!」
「うるせェ!いいから離しやがれッ!」
「エースっ!」
目の前で暴言を吐きながら暴れる女に、思わず口が開いたままになってしまう。
名前は……どうやらエースと言うらしい。
「クソが…ッ!」
そう小さく呟いたかと思うと、エースは男の腕に勢い良く噛み付いた。
悲鳴を上げて緩んだ男の腕からするりと抜け出し、勢い良く男を蹴り飛ばす。
「いってぇぇ!」
「男がそれくらいで悲鳴上げんじゃねぇよ。焼かれなかっただけ有難いと思いやがれ」
転がった男を睨み付けながらそう言うと、エースは俺に視線を向けた。
「…アンタが俺の結婚相手か?」
「…まあ…そうだよい」
「今日初めて顔を合わせたような相手と結婚するのは俺は御免だ。アンタだってそう思うだろ?」
漆黒の瞳で拗ねたような視線を俺に向けて同意を求めてくる、多分まだ二十そこらの女。
今見た限りではガサツで乱暴で、言葉使いのなってない小娘だ。
こんな女はこっちだって願い下げだ。
そう思うのに、何故か視線が反らせない。
俺が頷かない事に焦れたのか、エースはキュッと眉を寄せると、身体から 炎を揺らめかせた。