呪泉郷
□出会い(マルコ)
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慌てる周囲を気にする事もなく、完全に攻撃体勢に入ったエース。
その身体から揺らめく深紅の炎が、やけに目についてしまい、視線が反らせない。
俺と正反対のこの炎が、綺麗だと思った。
しかし会った途端にコレとは相当のじゃじゃ馬だ。
仕方なく両手を翼に変形させる。青い炎が俺の腕を包み込んだ途端、エースは鋭かった目を丸くしたかと思うと、次にキラキラしたものに変えた。
「すっげー…」
何が凄いのかと首を傾げた俺に、エースは嬉しそうにはしゃぎ始めた。
「アンタの炎は青いんだな!俺と反対だ!」
凄ェ綺麗だとはしゃぐ笑顔に少し興味が沸いた。
睨み付けていた時は随分大人びて見えたその顔も、こうして笑っていれば年相応のものだ。
結婚とまではいかなくても、近くにいて、この躾のなってない小娘のもっと色んな表情を見てみるのも悪くはないかも知れない。
チラリとオヤジに視線を向ければ、口端に弧を描くオヤジの姿。
どうやらオヤジもこのじゃじゃ馬が気に入ったようだ。
「エース」
「なに?」
覇気もすっかり消え去った可愛らしいソバカス面に、俺は小さく笑う。
「決めた。婚約の話はこのまま進めてもらう」
その俺の言葉に、エースが露骨に顔をしかめさせたのは言うまでもない。
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