呪泉郷
□サボの想い
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白ひげ海賊団、一番隊隊長マルコとうちのエースが婚約を成立させた。
………一方的に。
ロジャー船長も白ひげも喜んでたけど、うちの船員はガッカリしてしまった奴らの方が多かったように思う。
皆あの場では喜んで見せてたけど、現に今、食堂では愚痴ってる奴らがチラホラいたりして。
俺もその中の一人だ。
「エース、マジでマルコんとこに嫁いじまうのかなぁ…」
食べかけの肉を突つきながらボヤく船員に、周りから溜息が聞こえてくる。
エースは俺達と同じ男だけど、この船での人気は計り知れないものがあった。
恋愛対象での奴もいれば、憧れやただ単に可愛がっている奴など、好きの種類は様々なものだけど、人の手に渡ってしまうのが何だか無性に悲しいと思う気持ちは、恐らくこの船に乗っている皆が思っていることなんじゃないかと思う。
女になることが出来るようになったのだから尚更だ。
ロジャー船長は、この婚約を進めてどうするつもりなのだろう。
マルコがオーロ・ジャクソン号に来るのは立場上、絶対にない。
ならエースがモビー・ディックに乗るのか?
そんなのは絶対に嫌だ。
「はぁー…」
本日何度目になるか分からない溜息を吐き出して、俺は手に持っていた食べかけのパンにかじりついた。
いざとなったら、なりたくてなった訳ではない豚になってでもエースに着いて行こうと心に決めて。
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