呪泉郷

□悪戯心に火がついた(赤髪)
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たまたま極上の酒が手に入って、たまたまロジャー船長の顔を思い出した。
随分と挨拶にも行っていないし、エースとルフィにも会いたい。
そう思った俺は何となくオーロジャクソンを訪れた訳だが、これまた偶然にロジャー船長は白ひげの息子マルコと一人息子のエースを勝手に婚約させている最中だった。

しかも男同士だからという理由で自分の大切な息子を呪泉卿に落として女になれるようにまでしたというのだから笑わずにはいられなかった。
普通は同性同士なら諦めるだろうと突っ込みたくなったが、ロジャー船長がそれで良いと言うならば、きっとそれでも良いのだろう。
エースは気の毒だとは思うが。

そしてそのエースが婚約破棄をさせたいからという理由で、俺を好きだという演技をすると言い出した。

面白い。
面白すぎてここに訪れてから、元々締まりのない顔が弛みっぱなしだ。




「おい、エース」

「なに?」

「本気で婚約破棄させたいなら俺とお前は好き合ってるくらいの勢いじゃなきゃ駄目だ」

「好きあってるって……じゃあどうすりゃいいんだよ?」


不思議そうに首を傾げさせる何とも可愛らしいソバカス面に自然と笑みが溢れる。

男のままでも良かったが、どうせなら女になった姿も見てみたい。
そう思い、コップに入った水をエースにぶっかけた。
瞬く間に女の姿になっていくエースを上から下まで舐めるように見ると、エースは唇を尖らせた。


「なにすんだよ!」

「…ほう、これはなかなか…」

「おい、聞いてんのか?俺、女になんかなりたくないんですけど!」

「そうか。でも男同士でイチャついてるよりは女の方が良いと思うがな」

「……まあ、そりゃあそうかもしんねぇけど…」


よほど女になる事に抵抗があるのかエースは口を尖らせたまま、しどろもどろに答える。
その様子が何とも可笑しくて再び吹き出しそうになるが、ギロリと鋭い目付きで睨まれ、喉元まで出かけた笑いをグッと耐えた。


「よし!マルコんとこ行くぞ!」

「え?あ、うんっ、」


随分とか細くなった腕を引き、指を絡め合いながらマルコを探す。
案の定エースは露骨に顔をしかめさせたが、俺たち今は好き合ってるって設定だろ?と言えば、眉間の皺を慌てて弛めさせた。




ああ、面白くなりそうだ。










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