井ノ原×○○

□【ビターLOVE】
1ページ/11ページ





「岡田、好きだよ」



井ノ原からの他愛の無い告白。
【好き】と言われることが最近増えた。

それは誰にでも嬉しいこと。

好きな人に好きだと言われる。
こんな幸せを感じることはない。

ーーーーーそれなのに。



「............俺も」



自分が変なのだろうか。



「............、好き」



嬉しいと思わなくなった。
幸せだと感じなくなった。

いつからなんだろう。



「岡田......」



触れるだけのキス。

前までだったら本当に、
名前を呼ばれるだけでも嬉しかったのに。



(何でだろう)



心の奥が孤独に、
ちっぽけな穴が空いてる様な感覚。

無感情になった訳じゃない。
いのっちが嫌いになった訳じゃない。

それなのに、何でだろう。



「んじゃ、帰るな」



井ノ原は微笑み、
岡田の頭を軽く撫でて、帰って行った。

シンと静まり返る部屋。



「ーーー、はぁ」



そんな中、岡田の溜め息だけが響いた。

ーーーーーいつからなんだろう。
岡田は両手を組み、考え込んだ。

最近、恋愛感情が分らない。
いのっちと居ても心が和まない。

前までは幸せだったのに。



(理由は分かってるだろ......俺)



ギュッと無意識に手に力を込めた。
鮮明に脳裏に蘇ってくる嫌な記憶。



「いのっち〜」
「何だよー。この甘えん坊め」



楽しげに会話をする三宅と井ノ原。

それだけなら別に何も思わない。
同じメンバーだし、嫉妬もしない。

ーーーーーけど。



「チューしよーよ」



三宅の言葉に思わず目を見開く。
視線を井ノ原に送ると変わらぬ笑顔。

そして、信じられないことを口にした。



「仕方ねぇな〜」



そう言って、三宅とキスをする。

メンバーの、岡田の目の前で。
戸惑う仕草も見せずに堂々と。



「っ、おい井ノ原」
「...........、」



岡田と井ノ原の関係を知る、坂本と長野。

2人は岡田を気に掛け、
井ノ原に何か言い掛けようとした時。



「、大丈夫だから」



坂本と長野を止め、
岡田は顔に笑みを零しながら引き止めた。

俺は平気だから、と。
なんともないよ、と。



「岡田........」



坂本の表情が刹那げで。
それは長野も同じで。

だからこそ、岡田は笑顔で言った。



「メンバーの仲が良いってことやん」



ーーーーーそんなこと、本心じゃない。

本当はキスなんてして欲しくない。
ましてや、隠れずに目の前で堂々と。



「............っ、」



岡田は首を横に振り、
先程の記憶を頭の中から消そうとする。

でも、衝撃が強くて中々消えてくれない。



(嫌だ.....こんなの嫌だ......ッ)



このままじゃ健君が嫌いになりそうで。
そんなことを思ってる自分のことも嫌で。



「どうしたらいいの.....、」



1人きりの室内に返事は返ってくる筈もなく。
岡田は疲れきった様子で寝室に向かった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ