夢…みたいだね。
貴方が、隣で笑ってる。
不思議…だね。
好きが溢れてくるよ。
もう、ずっとずっと傍にいて?
もう、ずっとずっと離れないでいてね。
おかえりなさい
〜 随分待たせたな。ただいま 〜
魔人ブウとの戦いも終え、
悟空たちは、神殿でそれぞれ寛ぎながら、話しをしていた。
既に夕暮れ時を迎える時間だった。
すると、悟空はチチをいきなり両手に抱える。
「ひゃっ!」
短い声を上げると、頬を真っ赤に染めるチチ。
少しばかり、周りの目が気になるのもあるが、
悟空に久々に抱き上げられたことにドキッとした。
悟空はニカッと得意げに笑っている。
「ちょっ!悟空さぁ!」
「まぁまぁ、暴れんなって」
暴れるチチを他所に、
悟空は皆へ目を向けると、声を上げた。
「みんなぁ!そろそろオラたち、帰ぇるわ!」
そこにいるものは、皆、悟空に目を向ける。
「おぉ!じゃあな!お疲れ!」
「孫君!今度遊びにきなさいよぉ!」
クリリンは笑顔で返し、
ブルマは勝手な約束をした。
悟空は適当に相槌。
「悟飯、悟天、パオズ山に帰ぇるぞ!」
「はい!」
「うん!僕、眠たぁい」
そう言って、
悟飯・悟天は神殿を飛び降りる。
悟空も飛び降りようとするが、チチが静止した。
「悟空さ!待ってけれ!」
「ん?何だよ?」
「お、おら。こんな高いところから無理だべ!」
「大丈夫だって!オラがいんだろ?」
「そんなこと言ったって、怖ぇだ…。」
「何があっても守ってやっから、安心しろ」
そう言って、チチの返事も待たずに、飛び降りる。
身構えるチチ。
しかし、思った以上に怖くない。
「悟っ……。」
声を上げるのを、止めた。
悟空の心音が聞こえ、妙に胸の刻む音が早かったから…。
――悟空さ、
緊張してるのけ?
「チチ、大丈夫かぁ?」
風に遮られないように、悟空は声を張る。
はっ…とするチチは、
ぎゅっと首に回している腕の力を強める。
「うん。悟空さが守ってくれてるから、大丈夫だべ」
そう言えば、
悟空の心音が少し早まり、照れたように笑う悟空。
「チチ、見せたいとこあっからさ、二人で抜けて、そこいかねぇか?」
「えっ?」
「ダメ…か?」
悟空が尋ねると、
チチは悟飯と悟天のことが過ぎるものの、悟天は悟飯に任せられる…と思い、小さく頷いた。
「連れてってけれ?」
「よっしゃ!決まりだな!」
悟空はニカッと微笑むと、
地が見えてきた頃に、自宅方向へ向かっていたが、方向を変えた。
―――――――――――
「悟天!そんな飛ばすなってーー!」
舞空術をガンガン飛ばす悟天。
悟飯はやっとの思いで、悟天を食い止めると、
悟空とチチは着いてきていないことに気づく。
「あれ?お母さんとお父さんはぁ?」
「ん〜…」
悟飯は気を探ると、
二人の位置がわかり、小さく笑みが毀れた。
――今は二人にさせてあげよう。
「悟天。母さんと父さんは用事があるって行ってたんだ!先に帰ってよう!」
「えーー!僕、お父さんと寝たかったのにぃ」
「兄ちゃんが一緒に寝てやるから!いいだろ?」
「えっ!うん!僕、兄ちゃんと寝る!」
「じゃあ、早く帰ろ!」
そう言って、
悟飯と悟天は自宅を目指し始めた。
――父さん、母さん。
仲良くやってくださいね。
悟飯はそんなことを思いながら、小さく微笑むのだった。
――――――――――
悟空とチチは目的地に着き、
悟空はチチをゆっくりと丘へ降ろした。
丁度、夕暮れ時……。
目の前には大きく、眩しく、美しい太陽が輝いていた。
「ここ、綺麗だろ?」
「……うん。」
チチはその景色に感動した。
すぐ下には雲。
目の前には大きな太陽。
隣には大好きな人。
チチは胸が高鳴り、涙が溢れそうになる。
「オラ、ずーっとここに連れてきたかったんだけどさ、色々バタバタしてて連れてこられなかったんだよなぁ」
悟空は小さく苦笑いをしながら、話す。
チチは連れてきてくれただけで、もう満足だ。
「ありがとう。」
「おう!」
チチは悟空の肩に頭を乗せ、彼の腕に自分の腕を絡めた。
その懐かしい温もりに、
彼の太陽と似た香りに、
一筋、涙が流れた。
――大好きな彼が隣にいる。
今まで願っても叶わないと思っていた。
彼の隣でこうして寄り添うことも、
触れ合うことも、
笑い合うことも、
会うことさえも、できないと思っていた。
本当に、つい最近までは…。
けど、こうして彼が居る。
これほど幸福なものがあっただろうか?
「夢みたいだ…」
「夢?」
悟空はチチの瞳から流れた涙を、拭い、疑問を問いかけた。
「うん。またこうして二人でいられることが夢みたいだ。幸せだよ。悟空さ」
「オラも、幸せだ」
悟空は微笑み、チチの頭を撫でた。
「随分、待たせちまって、ごめんな」
「本当だべっ!」
「あははっ」
悟空は苦笑いを浮かべた。
チチはギュッと悟空の手を握り締めると、言う。
「もう、待たせねぇで?」
「うん。」
「もう居なくなんねぇでけれ?」
「うん。約束する。」
二人は見つめ合い、太陽に照らされながら、微笑んだ。
「おかえり…。」
「おう、ただいま」
悟空はチチの顔に手を添えると、まず頬へ。
そして唇へと口付けた。
太陽に映し出される二人の影は、とても幸せそうな笑みを浮かべていた。
貴方が隣にいる。
貴方が隣で笑っている。
貴方と隣で寄り添い会える。
貴方に触れることができる。
こんな日常的なことが、今とても幸せだよ。
本当に、おかえり……。
end......