貴方の香りが、
貴方の体温が、
貴方の仕草も言動も、全て、

私をときめかせるの。


まるで、少女に戻ったように…。

胸がドキドキして、
ときめいて、騒がしい。


私は未だに恋をしているよ。







ときめき
〜 僕もときめいている。そして恐ろしい程の独占欲に塗れている 〜






20時過ぎ――。


チチはシャワーを浴び終え、2階の寝室へ。



――悟空さ、
  もう、寝ちまってるだかな?


ふと、そんなことを思いながら、そっと扉を開ける。


そうすれば、案の定…。
悟空は腕を大の字にし、少し口を開けながら、眠っていた。



「もう、悟空さったら…」



なんて悪態はつくものの、
表情には優しげな笑みが毀れる。

そして、端に避けてあった布団をそっと、掛けてやる。



「ほんとに帰ってきたんだべな。」



いつも大きなベッドで寝ることが苦痛だった毎日。

残り香りは感じながら、
冷たいベッドで寝ることほど、寂しさを感じることはなかった。

それが、悲しくて、切なくて、
何度もベッドで縋るように泣いた夜すらあった。


けど今は――。

今まで想っていた彼が側にいる。
呼吸をして、鼓動を鳴らして、温かい体温を感じることができるのだ。


それだけで、じわっ…と涙が溢れて出てきそうになる。
ぐっと堪えるチチは、小さな笑みを浮かべた。



「おらも、そろそろ寝るだか。」



一人呟けば、
そのベッドの隙間へ潜り込む。

その温もりが心地良い。



「おやすみ、悟空さ」



ちゅっ…。
頬へと口付ける。

そうすると、チチの方へ寝返りを打つ悟空。



「んっ…ぅ」

「悟空さ。起きてん………?」



途中で言葉を切った。
…と言うよりも言葉が詰まった。

チチに覆い被さるような状態に寝返りをした悟空の顔は目の前にあった。



「っ……」



その体勢に赤面するチチ。
恐らく、かなり頬を上気させたであろう。

同時に、胸が高鳴り、止まらなかった。
ほんの一瞬、彼の顔に見惚れてしまうほどの高鳴りだ。



――おら、
  どうしちまったんだべ。

  悟空さ見ると、おかしくなりそうだ。

  もう、いい歳してるだに。
  何だか、少女に戻った気分だべ。



「じゃあ、オラも少年に戻っちまったんかな?」

「…えっ?」



悟空の声に驚いた。

まさか起きていた事。
そして心を読まれてしまった事。


大きく目を見開くチチは言葉を失う。
悟空はお構いなしに、続けた。



「オラもさ、チチ見てたり、触れたり、匂いとか動くたんびにドキドキしちまう。」

「な、にいってるだよ…。」



チチは心を読んだことに叱ろうと思っていたのに、
悟空の言葉で、戸惑ってしまった。
そして、理解すると、思わず赤面。

そんなチチを優しく、
しかしギュッと離さないかのように、抱きしめた。

そして、鼓動を聞かせる。



「なっ、オラの心臓、早ぇだろ?」



トクンッ、トクンッ、トクンッ………。。。

その心音は早く、
しかし力強い鼓動が鳴り響いていた。



「……うん。早ぇだ」

「だろ?でもオラ、チチみてっと自分が怖ぇんだ」

「なして?」



悟空はその言葉を言うのを戸惑っていた気がする。
その為か、少しの間を置いた。



「…おめぇをどうにかしちまいたくなる。」

「どういう意味?」

「何て言えばいいかわかんねぇんだけど…」

「うん。」

「……。めちゃくちゃに、壊しちまいてぇ…。」



その言葉に息を呑んだ。


――そったらこと、
  悟空さに言われるなんて…。


チチは悟空を見上げて、瞳を合わせる。



「いいだよ。おら…。」

「えっ?」

「……悟空さになら、何されたって構わねぇだ。だから…。」



――おらを壊して?





その言葉を最後に、
二人は深く、深く、唇を重ね合わせる。

舌を絡めとり、
どちらかの唾液かもわからなくなるほどの情熱的なキス。


そして、その後は……。
はっきりとは覚えていなかった。

ただ頭が真っ白だった。
そして、久しぶりの人肌に、温かさを感じた。
それはお互いを求め合い、深い愛を交わし、欲を吐き出した。
それも、何度も、何度も満たすまで…。


7年間という空白の時間が、
お互いの愛情を更に深め合い、それは暴走したのだ。




「好きっ、悟空さっ。大好きっ!」

「あぁ、オラもだっ。チチっ」



その言葉を最後に、
中へ欲を吐き出され、意識を手放した。

そして目を閉じる瞬間、見た彼の表情は、
紛れもなく、愛おしそうな瞳を向け、優しく微笑んでくれていた。












彼女の笑顔も、
彼女の匂いも、体温も、

視覚も嗅覚も、神経さえも、
彼女が欲しいと求めていた。


ときめいていたのも事実だ。

しかしそれを超えた感情は、酷く恐ろしい束縛心。
そして、闇に包まれた独占欲の塊だったんだ。


本当に思い知らされた。

何もかも、彼女全てが心底好きなのだと…。
それは言葉で言い表しても、全てが伝えきれないほどに…。


彼女を愛している。








end......

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