夢旅
□能力検査
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覚悟を決めて、拳を握りしめ構える。
前の扉から現れたのは………
「嘘……でしょ?」
(これがテラフォーマー?!もう、ゴキブリでもなんでもない………人型の形してるし!)
初めて見るソレは、恐怖の対象だった。
黒くて、大きくて、とにかく恐い。
台所にいる、ゴキブリなんてカワイイものだ。目の前のテラフォーマーに比べたら。
「……っう、あ」恐い、恐い!
歯がカタカタなる。膝が笑う。
私が恐怖心に呑み込まれそうになった瞬間、テラフォーマーは動いた。
(…っ!!速っ!)
咄嗟のことで、判断が遅れる。
このままじゃ………死ぬ?
嫌だ嫌だ。死にたくないっ!!
反射的に、動いたのは足ではなく、
喉。つまり、声だった。
『やめて!来ないでぇっ!!』
死が、目前に迫っていた
*******
オフィサー達は、マーズランキングのテスト中、クルー達の戦いを見ている。
それは、どんな能力でどのくらい強いのかを見極める為だ。
「おっ、次は例の女の子かー。いやーカワイイ子だといいな!」ジョセフの空気が読めない発言は、ミッシェルの怒りを買った。
「おい、ジョー。ふざけるな、真剣にやれ。…制御室!危なくなったら、すぐ止めろ。分かったな?」
「ミッシェルちゃん、そんな心配しなくても大丈夫だって………あ、ごめんなさい。ちゃん付けしたのは謝ります」小町は、ミッシェルに睨まれ即座に謝った。
「まあ………お手並み拝見といこうじゃないの。……うちのロシア班と張り合うくらい強いのかねぇ」タバコをすいながら、アシモフはあまり興味がないように言う。
「……これまた、若いお嬢さんだねー。紅ちゃんと同い年かな?」緊張感が一番無いが、その目は細められていた。
(モザイクオーガンを最初から持っている………か。これは、上に報告しなきゃだね………)
「………………………」アドルフは、いつもと変わらず、無口だった。しかし、その目はモニターに向かっていた。
(………何もなければいいが…)
モニターにはるかの姿が映される。もうすぐ、模擬戦闘が始まる。
見ると、深呼吸して心を落ち着かせているようだ。
………テラフォーマーが入ってくる。
オフィサー達は、静かになり皆、モニターに注目していた。
見ると、はるかは人為変態したが、テラフォーマーを見ると怯えてしまい、震えている様が見てとれた。
『やめて!来ないでぇっ!!』はるかはそう叫んだ。
(ああ、こりゃダメだな…)
オフィサー達がそう思い、止めさせようとした瞬間、はるかを殺そうとしたテラフォーマーは、ピタリと動きを止めた。
(……?)
何が起きたのか、疑問に思う中、ある違和感に気づいた。
それは、はるかの声を聞いた瞬間、『彼女から離れなければならない』という命令を受けたような感じがしたからだ。
思わず、壁に後退りしてしまった者もいる。
『お願いだから、私から離れて!』
さらに、彼女が叫ぶと、テラフォーマーは驚くべきことに、彼女から離れたのだ。普通、訓練に使われるテラフォーマーは、人間に襲いかかるように設定されている。だから、そのテラフォーマーが『離れる』という行動はとらないはずなのだ。
(これが、はるかの能力……?)
オフィサー達が、驚愕していると、モニターに映されているはるかは気を失って倒れてしまった。
「っ!テスト中止!はるかを早く運べ!」それを見るやいなや、ミッシェルはすぐさま指示をだした。
「……驚いたな」小町も、モニターを見ながら、思わぬ結果に驚きを隠せない。
見ると、テラフォーマーは彼女の命令に従っているかの様に、ずっと離れた所で立っている。
「これは、凄いね…彼女は、とんでもない能力を持っているかもしれない」
ジョセフは、ふざけた雰囲気を消して、モニターを見ていた。
………いったい、彼女はどのくらいの順位だろう?
「………まさか、一位だったりして…」