夢旅

□日常から非日常へ
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「ん……」ゆっくりと目を開くと、視界がぼやけて周りがよく見えない。
「ふあーっ」大きく欠伸をし、目をこする。……随分長く寝ていた気がした。私は、懸命に起こったことを思い出そうとした。

えっと……、確か道路に飛びだした子どもを助けようとして……そのあと、どうなったんだっけ?

そして、私は一つの答えにたどり着いた。
「っ!」そうだ、ここは病院だ。なんか、検査着っぽいものを着てるし、周りの器具や雰囲気が病院みたいだ。いてもたってもいられなかった。私は、見たところ外傷はないが、子どもは何か大怪我をしたかもしれない!
そんな嫌な考えが頭をよぎって、ベッドを降り、立ち上がろうとすると目の前が一瞬、暗くなってふらついた。
倒れる!と、思って身構えた瞬間、何か暖かくてがっしりとしたものに支えられた。

「?」目を開けると、優しそうな男の人の、少し大きい目や黒くて短い髪
、しっかりとした顔つきがドアップで見える位置にいた。
「う、うわあ?!」いきなりのことでなぜか恥ずかしくなってしまい、変な声が出た。
「おう、大丈夫か?」
男の人はそう言い、はるかを抱えベッドに降ろした。
「駄目だぜ?まだ安静にしてねーと。あんたに何かあったら、ミッシェルさんに殺されちまう」頭をガリガリかいて、苦虫を潰したような表情をした。そのミッシェルさんとやらは、怒るとかなり恐いらしい。

「あの、ありがとうございます。えっと、あなたの名前は?」
「俺の名前は、膝丸燈。あんたの名前は?」
興味津々に人の名前を聞いてくる。とても、明るくていい人そうだと思った。
「渡邉はるかです」
「つーことは、日本人か!じゃあ俺と一緒だな。あ!あと、他にも聞きたいことがあるん……」ビクッ!
膝丸さんが俺、終わったわという顔をしていたので、その視線を追っていくと、


「おい、燈。病人口説こうとしてんじゃねーよ」


美しい金髪の女神のような女性がいた。


「す、すみません!ミッシェルさん、いや、口説いてたんじゃなくてですね…世間話を」
「……起きたら、真っ先に報告しろと伝えた筈だが?」
チラリとメガネの奥のシャープな切れ長の瞳がこちらに向けられる。

「……調子は良さそうだな。大丈夫か?あの事故から丸一日、目を覚まさなかったんだぞ」
「え?!丸一日?!」そんなに、寝てたんだ…どうりで体が重いはず……

「って、そんなことより!!あの、子どもは無事でしたか?!」そうだ、自分よりあの子のことのほうが心配だ。取り返しのつかないことになっていたらどうしよう……!

「無事だよ。あのあとすぐに親に返した。というか、お前が守ったんじゃないか」


「へ?」いやいやいや、全然覚えてない。……一体、あの時にどんなことをひて子どもを助けたのかよく覚えてない。

「まあ、その件については後ほどゆっくり話してもらうとして、燈」
ミッシェルさん?がそう言うと、膝丸さんは、車椅子のような物を出して乗せてくれた。そのまま、ミッシェルさんの後に続くように車椅子を押されている。

「あのー、どこに行くんですか?」
恐る恐る聞いてみると、ミッシェルさんはこちらを見ずに、艦長のところだ、と言った。





(これから、どうなるんだろう……)一人不安になりながら、近未来的な構造の建物の中の廊下を進んでいく。
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