夢旅
□能力検査
1ページ/3ページ
朝から緊張していて、身体が震える。
(……大丈夫。大丈夫)
ガラガラ……私は、手術室に運ばれているところだ。緑色の手術着に着替えて、白くて長い廊下を移動する。
「大丈夫だ。君はモザイクオーガンを持っているから、きっと成功する」小町艦長が、震えている私の手を握ってくれる。……温かい体温が伝わり、少し緊張がほぐれる。
「安心しろ。気を強くもつことも大切だぞ」隣から、ミッシェルさんも元気づけてくれる。
「……はい。頑張ります」テレビやドラマでしか見たことがなかった。
手術っていうものを。
……正直、怖い。
少し泣きそうになったときに、誰かの低い声が聞こえた。
「……大丈夫だ。お前の手術は成功するだろう。だから、泣くな」
横を見ると、アドルフさんがいた。
目尻にたまった涙を拭ってくれる。
「あれ?アドルフ、お前がはるかを心配して来るなんて……もしかしてー…」小町艦長がニヤニヤしながら、アドルフさんを見た。
「いや。なにをニヤニヤしてるんですか?ふざけないでください」
冷たい目で小町艦長を見据えるアドルフさん。ミッシェルさんは、やれやれ……といったような表情をしていたような………いや、あれはイライラしてるな。うん。
「大丈夫ですよ。皆さん、私頑張ります!!」
皆が応援してくれるから、大丈夫。
私は成功する。
そして、手術室に着く。そのドアが開いて中に入ろうとしたとき、遠くから声が聞こえた。
「はるか!頑張れよ、待ってるからな!」燈だ。
「はるかーっ!死ぬんじゃねーぞーっ!!」マルコスだ。
「はるか、諦めんなよ!終わったらどっか遊びに行くぞー!」アレックスだ。
「はるかー!私、信じてるからね!頑張って!」シーラだ。
………もう泣かないって決めたのに
扉が閉まる瞬間まで、私の新しい友達は、ずっと声を掛けてくれた。
固く拳を握りしめて、深呼吸する。
(…絶対、成功してやる!!)
上でライトがバッバッと点灯した。………これから、始まるんだ。不思議と怖くなかった。
………麻酔が効いてきた。…意識がぼんやりする。
…………願わくば、燈達にもう一度、会えますように………………
*******三日後
誰かに名前を呼ばれている。
意識がまるで、温かい海に浸食されてしまうようだ。潮の満ち引きのように、聞こえる声も遠ざかったり、近くなったりする。
『ーっ、………ーろ!』
誰だろう…?そう思い、重い瞼をあげる。
「……………あ……」
「!起きたか。……良かったな、手術は成功したぞ」ミッシェルさんが、側に座っていた。
「………ミッシェル…さん。おはようございます」また、会えたことが嬉しくて、そう言うと、
「ああ、おはよう」
ミッシェルさんも、笑顔で返してくれた。
「………ミッシェルさん、私が起きるのを待っててくれてたんですか?優しくですね」
「……別に、待ってたわけじゃない。お前がちょうど、目を覚ましただけだ…」少し、照れながら否定するミッシェルさん。……この人はオフィサーだからなのか、もとからなのか分からないが、妙なところで強気…というか、意地を張る。
しかし、ミッシェルさんの後ろの机を見ると、缶コーヒーが何本か置いてあった。
……これは、私を心配して待っててくれていた、と自惚れていいのだろうか?
「……いえ、やっぱりミッシェルさんは優しいですね」
「……勝手にしろ」表情が上手く読み取れないが、これはあれだ。俗に言うツンデレというやつか。
しばらく、ミッシェルさんと話をしていると、小町艦長が病室に入ってきた。
「おはよう!はるか、身体は大丈夫か?」よっこらしょっ、と小町艦長はベッドの近くの椅子に腰かけた。
「おはようございます、小町艦長。はい!身体は大丈夫です」
「そうか、それはなによりだ!ミッシェルや、燈達にあのアドルフまではるかのことを心配してたからなぁ」あ、もちろん俺もね!そう言って、小町艦長は手元の資料みたいなものに目を落とす。
「……さて、本題に入ろう。はるかの手術は成功した。そして、君の身体に適合する生物だが……これは哺乳類だったな。主な能力は、特定の音や超音波を操ることができる」
……哺乳類か。よかった…爬虫類とか気持ち悪いのじゃなくて……
ひとまず、私はホッとした。
「戦闘向きかは、また後で判断するとして、君には話しておかなればならないことがある。長くなる話だが、知っておいてほしい」
小町艦長と、ミッシェルさんを取り巻く空気がピンとはりつめる。
「火星探索では、必ずといってもいいだろう…ある生物との戦いになる」
(火星に生物が存在している?……一体、どんな生物が…)
「それは、非常に生命力が強く、この人為変態の能力がなければ倒すことができない。…俺達が戦う相手は、『害虫の王』ゴキブリ……………つまりテラフォーマーだ」
そして、語られる
恐ろしい、害虫と、非力な、人間の話が