夢旅

□能力検査
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朝から緊張していて、身体が震える。

(……大丈夫。大丈夫)

ガラガラ……私は、手術室に運ばれているところだ。緑色の手術着に着替えて、白くて長い廊下を移動する。

「大丈夫だ。君はモザイクオーガンを持っているから、きっと成功する」小町艦長が、震えている私の手を握ってくれる。……温かい体温が伝わり、少し緊張がほぐれる。

「安心しろ。気を強くもつことも大切だぞ」隣から、ミッシェルさんも元気づけてくれる。

「……はい。頑張ります」テレビやドラマでしか見たことがなかった。
手術っていうものを。


……正直、怖い。


少し泣きそうになったときに、誰かの低い声が聞こえた。

「……大丈夫だ。お前の手術は成功するだろう。だから、泣くな」
横を見ると、アドルフさんがいた。
目尻にたまった涙を拭ってくれる。

「あれ?アドルフ、お前がはるかを心配して来るなんて……もしかしてー…」小町艦長がニヤニヤしながら、アドルフさんを見た。
「いや。なにをニヤニヤしてるんですか?ふざけないでください」
冷たい目で小町艦長を見据えるアドルフさん。ミッシェルさんは、やれやれ……といったような表情をしていたような………いや、あれはイライラしてるな。うん。

「大丈夫ですよ。皆さん、私頑張ります!!」

皆が応援してくれるから、大丈夫。


私は成功する。




そして、手術室に着く。そのドアが開いて中に入ろうとしたとき、遠くから声が聞こえた。


「はるか!頑張れよ、待ってるからな!」燈だ。

「はるかーっ!死ぬんじゃねーぞーっ!!」マルコスだ。

「はるか、諦めんなよ!終わったらどっか遊びに行くぞー!」アレックスだ。

「はるかー!私、信じてるからね!頑張って!」シーラだ。





………もう泣かないって決めたのに

扉が閉まる瞬間まで、私の新しい友達は、ずっと声を掛けてくれた。
固く拳を握りしめて、深呼吸する。

(…絶対、成功してやる!!)



上でライトがバッバッと点灯した。………これから、始まるんだ。不思議と怖くなかった。


………麻酔が効いてきた。…意識がぼんやりする。








…………願わくば、燈達にもう一度、会えますように………………










*******三日後


誰かに名前を呼ばれている。


意識がまるで、温かい海に浸食されてしまうようだ。潮の満ち引きのように、聞こえる声も遠ざかったり、近くなったりする。

『ーっ、………ーろ!』
誰だろう…?そう思い、重い瞼をあげる。


「……………あ……」
「!起きたか。……良かったな、手術は成功したぞ」ミッシェルさんが、側に座っていた。

「………ミッシェル…さん。おはようございます」また、会えたことが嬉しくて、そう言うと、
「ああ、おはよう」
ミッシェルさんも、笑顔で返してくれた。

「………ミッシェルさん、私が起きるのを待っててくれてたんですか?優しくですね」
「……別に、待ってたわけじゃない。お前がちょうど、目を覚ましただけだ…」少し、照れながら否定するミッシェルさん。……この人はオフィサーだからなのか、もとからなのか分からないが、妙なところで強気…というか、意地を張る。


しかし、ミッシェルさんの後ろの机を見ると、缶コーヒーが何本か置いてあった。
……これは、私を心配して待っててくれていた、と自惚れていいのだろうか?


「……いえ、やっぱりミッシェルさんは優しいですね」
「……勝手にしろ」表情が上手く読み取れないが、これはあれだ。俗に言うツンデレというやつか。






しばらく、ミッシェルさんと話をしていると、小町艦長が病室に入ってきた。


「おはよう!はるか、身体は大丈夫か?」よっこらしょっ、と小町艦長はベッドの近くの椅子に腰かけた。
「おはようございます、小町艦長。はい!身体は大丈夫です」
「そうか、それはなによりだ!ミッシェルや、燈達にあのアドルフまではるかのことを心配してたからなぁ」あ、もちろん俺もね!そう言って、小町艦長は手元の資料みたいなものに目を落とす。


「……さて、本題に入ろう。はるかの手術は成功した。そして、君の身体に適合する生物だが……これは哺乳類だったな。主な能力は、特定の音や超音波を操ることができる」

……哺乳類か。よかった…爬虫類とか気持ち悪いのじゃなくて……
ひとまず、私はホッとした。

「戦闘向きかは、また後で判断するとして、君には話しておかなればならないことがある。長くなる話だが、知っておいてほしい」
小町艦長と、ミッシェルさんを取り巻く空気がピンとはりつめる。

「火星探索では、必ずといってもいいだろう…ある生物との戦いになる」
(火星に生物が存在している?……一体、どんな生物が…)




「それは、非常に生命力が強く、この人為変態の能力がなければ倒すことができない。…俺達が戦う相手は、『害虫の王』ゴキブリ……………つまりテラフォーマーだ」






そして、語られる




恐ろしい、害虫と、非力な、人間の話が
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