長編


□1.無条件な脱出
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自問自答しきってどれ位たったのだろう。

少し慣れたのか、足も伸ばせるようになったし。
初めに比べて少し安心した。

でもまだ悩む。一体ここはどこなのか…
それより出られるのだろうか…


本来なら出口まで正確に把握してから脱出したい所だけど。
先ほどのピエロの言葉が頭にちらつく。

このままでは誰かに売られてしまう。子供とて長年の理解力があるのだよ。

幸い、「かがくしせつ」なる所で自分にメリットがあるのかすら分からないかったこの身体力が、
ついに役立つかもしれない。

まずはこの檻を丹念に見てみようとおもった。

柵に近づき手で触ってみる。


「…ぁ。これなら…」

柵は長年使ったのか、錆び付いているし、多分前この檻にいた人達が殴るなりしたのか脆い。

足に妖力を集中させればひとつとして壊せそうだ。

覚悟を決めて一歩、二歩と後ろへ下がる。地面が傾かない程度に…


「おい、あの娘何しようとしてんだ?」

「体当たりして抜け出すつもりだよあの子!やめときな!落っこちまうよ」

「そうだ!馬鹿な事はやめておとなしくしないと!
さ、言うことを聞くんだ。」

「嬢ちゃん名前は?!いくら天竜人とて子供にはっ…!さぁ、戻るんだ。」

次々に皆が小さな体が落下する現状を見たくないと、騒ぎは起こしたくないとの思いで名無しさんを説得する。


『だまっててっ!!!』


ダンッ


ガッ!ギィッ!!


名無しさんは一目散に軋み揺れる地面と対抗しながら咄嗟に走った。

すると錆びた柵は、微かなひびが入り、広がり、丁度名無しさんの首元まで割れて、割れ落ちた柵は暗闇の底へと落ちていった。


「う、うそだろ!?大人がやっても無理だってのに…」


名無しさんは周りを見渡して確認して、いざ飛び降りようとした…


その時、





「ま、まて!!!!」

『!?』


横の檻にいた年配の男が名無しさんの足を掴み阻止する。
落っこちてしまうギリギリで名無しさんは柵の棒につかまって、一息つくと男を睨む。

その男の目と引きつった口、汗といい、その表情は過去にあった出来事を思い出させた。


「じ、嬢ちゃん!俺も助けてくれ!」



【頼む名無しさん!助けてくれ!】


幾度とみた、縋り付く泥の涙。


「そ、そうよ!お願い私も助けて!こんなとこで死にたくない!」


【死にたくないの!お願いよ!】


縋り付くようなー…

「黙ってみてねぇで助けろガキ!」


【兵器は言うとおりにしてろ!】


あの頃のように…




幼い少女に助けを求める声は増え、
砂糖に集り募るアリのように、‘‘商品達”は少女に集まってくる。

名無しさんは焦った。
助けようが助けまいがどうでもいい。どうでもいいのだ。
しかに獣のようなギラギラとした人々の目に名無しさんは為す術もなく身開いて見つめていた。



「無駄だよ…その子に頼んでも」


「「「「!!!!」」」」

『ぇ…』




底には左足を檻の外からぶらぶらと揺さぶって、目を閉じて寝転んでいる40代後半の女性が寝転んでいる。

髪はくしゃくしゃだけどコルセットドレスを着こせている。
蛇のような艶かしさがある。




「売春婦は黙ってろ!これは俺たちやお前にもチャンスなんだよ!!!」




「馬鹿だねぇお前さん達。その子の檻は普通のより錆びてるだろ?

大見品は準備前にそこに置かれるからだよ。

一番珍しい‘‘商品”が置かれるから、前のが暴れて錆びてるんだよ。」

そうか…だから容易く…!


「それでも!俺たちだけでも何とかなるんじゃ…!!!」


「そこのジジイがその子の足を強く引っ張るもんだから。

痛んでてもう中々歩けんだろう?
嬢ちゃん、あんた、痛いかい?」


「っ…!!!」

『あ…はぁ…』


「じゃあどうしろと!?」

「嬢ちゃんが外へ出て、海軍等に助けを呼んで。
あたし達が誘拐された一般市民だと知らせてきてくれた方が得策さね。
ラッキーな事に。その子首輪してないし。」

「んなの、海軍が信用できるのか…?」

「…ちょいと嬢ちゃん、此処まで来ておくれ」

『…ん…。』


名無しさんは猿のように檻を飛びこれて、女の元まで来た。
途中「必ず助けろ』などの言葉が聞こえたがこの際無視だ。


「これを持っていな」
『……?かみきれ?』
「【ビブルカード】だよ。名前の書いてある相手の状況や居場所…色々わかるんだよ」
「これを海軍に渡せばいい。いいね?marineや正義って文字が書かれてる白い人達にだよ!」

『わかった…けど、わたしこのばしょのこと…しらな










「次の商品運ぶぞ〜」
「ふーん…海賊かよ。売れんのかね〜?」
「なぁに、またこいつも馬車用だろ。」











「『!!!』」

来ちゃった…




「早くお行き!壁についてる穴から地下水に繋がってるから!」
『さいごにききたい!ひとつ!』
「なんなんだい!?」
『ここはどこで、どんなとこ!?』









「ヒューマンオークション。貴族どものスーパーさ。
売られたくないなら逃げ切りな。」



その瞬間名無しさんは飛び跳ねて、壁に張り付きペタペタと手探りで穴を探した。

滑った感触と微かな光を見つけの登ると小さな洞窟があった。
すぐさま名無しさんは潜り込み奥へと進んで行った。






「た、助かるか…?」

「さぁ、ね、聞き分けの良さそうだし。なんとかなるでしょ。

猿みたいに動く子だったねぇ…」











『つかまりたくないつかまりたくないつかまりたくないつかまりたくないつかまりたくない!!!!!』




無条件な脱出
(あの子、大丈夫かねぇ…)
(つ、つかまるもんかぁ!!!)
 

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