長編


□2.ピリオドのような…
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とりあえず小さな洞窟の奥を無我夢中に走ってはみたものの、
機密や設計図がないからどうしようもできない。
渡されたものとしてはこの、バブ?バ…バブルカード?位か。

「ちずくらい、
あればいいのに…
なんで じょうきょうたんちき
みたいなのわたすんだろ!」

何となく、あの女の人も自己主張があるのか…。と思う。
でも仕方が無いか。出れたのは私だけだと思うし。
いやでも、そんならなんで地下水だって分かるのかな?
まぁいいや。今は一刻も早く行動せねば…




白や黄色いランプの進む方向へ黙々としかし、駆け足で歩む。下水独特の濁った匂いに混じって、鉄や腐臭の匂いがする。


恐らく鞭やらで打たれて垂れた血が下水道に流れたか、

あるいは、錆びて老化した鉄かだ…。

過去の経験で色々分かるものだ。この空間の一部にならないように。どれほどの罪を背負ったか。今では忘れてしまった。

『あれ?…』

どっちだろう…

名無しさんの向く先には道が二つに分かれていて。
どちらの方向も暗闇だ。

耳を澄ませて深呼吸する様に周囲の匂いを嗅ぐ。

『ひだりが…冷たい』

左は奥から冷たい風と水の音がする。
多分ファンが回っててその向こうが別の下水道に繋がってるんだろう…

『よしやめた!』

以前、前の世界で取引相手と潜入以来を受けた時に…。ファンを選んだ時があった…そこでファンがしっぽに当たり…

【きゃいん!?】
【名無しさん!?おまっ、尻尾ーーー!!】




お陰様で尻尾の怪我完全回復するのに3ヶ月もしました。

でもその頃、誰か医者とかを手配してくれるような事はなく、
親の居ない私は自分で如何にかしたっけ…


『あのトリヒキアイテ、もうしんだっけ…』



気を取り直して左に鼻を鳴らしてみる。



香水、布の匂い、微かに香る新鮮な空気。

『これだ…!』
人混みは嫌だけど、この際うじうじとしてられないと。
名無しさんはスッと足を軽くして右へいった。


2分程走れば地面の生臭い水も引いて、靴についた泥も乾いていた。

コンクリートも木製の地面になつていた。
香水に混じって酒の匂いが微かにする。

名無しさんは自分のした選択が正しいと判断し壁についている鼠よりも足を早めた。

あぁよかった!ここでー…



ゴッ!バキッ!




あ…





嫌な音がした。不覚だった、
目先の事で周りを疎かにする事は昔からの悪い癖だった。


状況を把握するも虚しく、息を吸う前に体が下へ落下した。
吃驚して心臓が跳ね上がり頭頂までせり上がった。


ドシャアッ!パリッ!!!


「うわっ!な、なんだ!?」
「上から!?」


木に掠れた二の腕と太腿が落下した痛みよりじんじんする。身体中が何故かべたべたする。

アルコール、…お酒の匂い…。


「あっ!こいつ、商品の中にいた!」
「逃亡にようとしたのか!?」
「おい見ろよ!首輪がとれてやがるぞ!」
「はぁ!?」


『……はっ!』
さっきのピエロたちが自分を囲っていた。
ばれてしまった…
「こいつ…ちょっとオーナー呼んでくるわ!」





それはまるでピリオドのように…
(人生で”二度目”に任務を失敗してしちゃった…)
(こいつ子供なのにどうやって奴隷の首輪をはずしたんだ…?)
 

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