鬼灯の冷徹(+他アニメとのコラボあり)長編

□甘味と荒地
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「……?お前さん、ここいらじゃ見かけねぇ面だなぁ…」

「え?私ですか?」

いつも通う甘味処で、見慣れない顔をみて町人の番人が頭巾をかぶった男に話しかけると、
丁度食べ終わったのか立ち上がり町人に振り返った。
座ってて知らなかったが、頭巾の男は180cmはある長身で、その高さに番人が巨人!?と呆気に取られた。
「ひぉ〜!!お前ぇさん、すんげぇ背がたっかいねぇ!天井突き破っちまうよ!」
番人は驚きながらも怯えず、喋りながらもケタケタと笑っていた。

「お前ぇさん、旅人だろ?」
「えぇ、まぁそんな所ですね。貴方は番人ですね?」

「そうそう!番人といっても城じゃなくて、お偉いの屋敷だがなぁ、でもこう見えても長年いろんな奴を見てきて、こんな珍しい奴は旅人さんで二人目だぜ!」

「二人目……?」

「あぁ、一人目の奴は、薬売りでよ?、あ〜、何でも、何かを斬りに来たって言ってた。まぁ旅人になんか似てたな!」

「あ、だいたいどんな奴かわかりました。」

「ところで旅人さんは名は何て言うんだ?」

「あぁ私は……加々知と言います。」
「蛇の名めぇか!あいやでもホオズキとも呼ぶな…薬売り以上におもしれぇじゃねぇか!なぁ徳兵衛!」

番人が奥へ声をかけると、はははっ!と笑い声だけ返された。

「あの……」
「あぁ悪ぃ、気ぃ悪くすんなよ?冗談だからさ…」

「いえ、それはいいのですが、少し気になったのがありまして…あの東の黒い場所は……?」

加々知が指差した場所は東の緑の一面に一箇所だけ黒くなっていた。

「あぁ、あそこは荒地だ。元は村だったんだよ。」

「村……」

「丁度1月前の話だが、以前あの村にはいい話がねぇんだ。
古狐神とかいう神を拝んでてよ、よく生贄を捧げてたんだ。その生贄が嫌なもんでよぉ。」

「……その、生贄とは?」

「なんでも、清いとかで村の童を捧げてたんだ。」

「ほぉ…。よくある話ですね。嫌な事実です。」

「まぁそうなんだが、その生贄の童は"子消し"って呼ばれてるんだがよ、…今年で7番目だったか?その7番目の子消しがおかしいんだ。」

「おかしいとは?」

「旅人さんも気になっちまうか?…俺も一目見たんだが、もうびっくりだぁ、天女でも降りたようで、この世のものじゃねぇ程べっぴんでよ」

「童でしょう?」

「童だけど、なんかちげぇんだ。生贄になる前、花街で滑稽舞をして出稼ぎしててよ」

「道化か何かですか?」

「いやいや、その滑稽舞がよ……裸踊りなんだ。」

「!…それはまた…。いいんですか?清い身で捧げるのに」

「いや、売女はしねぇよ。舞うだけだ。まぁそれでも問題だがよ、これしねぇとおっ死んじまうてんで…本人も仕方ねぇんだろ。
でも別に村の奴ら恨んでないみたいだったな…」

「……。」

「まぁ、その子消しが生贄となってからもう姿が見えなくなって…あぁそうそう、今の子消しの前になるはずだった子供がいたんだ。」

「え?」

「南蛮と娼婦の落とし子で、本来はその子のはずだったんだぜ?
でも今の子の方が親とかわからないからってんで、変更したわけ。
それから戊たった時(5年後)だな…」

「戊にいったい何が…?」

「その夜は普段通りに皆ねてて。なんの物音も風もなければ光も無かったんだ。
次の日村の辺りをみたら黒い煙が空一面に広がってて、あの村は焼け野原になってた……
おかしいんだ。だってこの一晩、番人してた俺すら見てないのに。」

「奇妙ですね…」

「皆な神隠しと言ってるけど、俺はあの子消しの子が気になるね。今でもあの美しい少女の顔を思い出すと、若いうちに無念だと思うよ…ま、そんなもんであぶねぇからこの先は「…………ちょっと行ってみたいですね。」

えっ、と番人が顔を上げると、加々知はすでに歩き始めていた。

「…変な奴だったなぁ…。」






薬売りが頭巾だからこの時代鬼灯様も頭巾な気がする!

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