仮面ライダー鎧武短・中編&その他集

□ブルーアントワネット
1ページ/15ページ

 ブルーアントワネットは、パルシアン王朝15代目リュシアン3世の娘。
 しかも一人娘のため、箱入り娘のように大切に育てられていた。
 所謂、生まれながらの王女様という存在である。
 本日もきらびやかな宝石。それにフリフリのドレスを身にまとい、舞踏会に明け暮れていた。

「ブルーアントワネット様、是非私と踊っていただけませんでしょうか?」

 そう言って、王女に手を差しのべてきたのは、フルハームという名の大臣の息子だ。
 茶色い髪に同じく茶色い瞳をもつ青年。イケメンと言えるその顔は、人々を魅了するとも言われている。
 しかし、王女はいつもそういうものばかりを相手しているためか、あまり興味がなさそうだ。
 深々と椅子に座ったまま、動きもしない。

「ワタクシ、ちょっと酔ってしまったので、風に当たりますわ」
 
 もはや無視をして、伴をつれてベランダに向かっていく。
 残された、フルハームは憎らしげにその王女の行く先を見つめていた。所詮、王がいるからこそ、あいつはいられる。
 誰があんな女に…
 フルハームは自然と下唇を噛み締めていた。


「しかし姫様、流石に先程のは殿方としても流石に…」

 侍女にそう言われた王女は、それがどうしたのという目を向けている。やはり、王女にとって、そのようなことはわからないようだ。

「勝手に言ってきたんじゃない。あんな男、興味もないわ」

 その言い方の冷たさに、侍女達は思わずため息をついてしまった。
 王女の容姿もたしかに、金色の美しい巻き髪に、水色の瞳という、まるで人形のような美しい容姿をしているがために、男からかなり言い寄られるのもわかっている。
 だが、いまだにこれはという男にあったことはない。

 政略結婚なんてごめん。
 私が自分で選んで見せる。

 王女はいつも、心の中でそう決めていた。
 ベランダより見える、ガラス張りの星空は美しく光輝いている。
 この星自体が宇宙船。彼女たちはずっと移動して生活をしていた。その昔、謎の侵略を受けたため、そこから逃げるために惑星形の宇宙船を開発して、今に至るらしい。
 まあ遠い先祖の頃だから、歴史として知っているだけで、よくは知らないが、それ以来彼女達は大地というものを知らなかった。
 誰も知らない、誰も住んでない惑星を求めて、彼女達は旅を続けている。まあ、植物もこの惑星型宇宙船で賄えているため困らないでいるが。

「あの星…本当に美しいわね」

 気がつけば、かなりの辺境の地までやってきていた。ここまでくれば、星図にものっていない、未知の星が多い。
 ちなみに、今目の前にある青い美しい星も図鑑でもみたことがなかった。

「確かに美しい星ですね。我らと適合出来れば宜しいのですが。あの様子でしたら、大地はありそうですし。あと、先住民がいないといいのですが」

 極力揉め事をおこさないように、それが王女の父親である王の意思である。

「甘いのよ。いつまでも、そんなんだったら、見つかるものも見つからない。力さえ見せれば、相手は逃げていくものよ」

 そう、いつも感じている。父親は優しすぎる。戦いを好まないのはわかるが、必要な戦いはしないといけない。
 だってワタクシ達が負けるはずはないのだから。

「あの、どのような力を持っているのかわからない相手と戦うことは危険です」

「じゃあ、見に行けばいいじゃない。ミラージュを用意してちょうだい」

 ミラージュとは王女専用の小型宇宙船である。この星ごと着陸などは不可能のため、小型宇宙船や輸送船などをこの惑星型宇宙船には収納してある。 
「しかし…こんなこと陛下に知れたら」

 王は一人娘ということもあり、とてもブルーアントワネットを可愛がっている。つまり、王女に何かあった場合、この侍女にも責任が及ぶ。
 下手すれば命が危うい。

「いいの、ワタクシが勝手にやったこと。貴方に責任はない。…さあ、私から行くから、別にいいわ」

 もはや止めても聞かないというのは日常であった。
 侍女は諦めて、そして覚悟した。今度こそ何かあったら、その時は…
 正直、侍女にとっては憂鬱でしかなかった。
次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ