仮面ライダー鎧武 長編小説
□暗転外伝 二度と体験したくない日
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この事件のすべてのはじまりは、紘汰と舞が旅立った、新たな星(世界)での出来事だった。
この星(世界)には、表側と裏側がある。
表側の世界は、まさに楽園ともいえる様相である。木々に覆われ、川や滝などの水も豊富であり、小動物も沢山すんでいる。色とりどりの花々に囲まれ、世界全体が明るく、舞と紘汰の夢見た楽園がそこにはあった。
地球とは違い文明は進んでいないかもしれないが、かわりに自然に満ち溢れて、ここにいるだけで優しくなれる気がする。
一方裏側は、光がどうしても届きにくく、少し薄暗い雰囲気である。
そこには、ヘルヘイムの植物と言われるあの特殊な植物に覆われ、地球上より連れてきたインベス達が住んでいた。
最も、紘汰の力によって、ヘルヘイムの果実は金色に輝く果実に変えられ、インベス達もまた、知能をもち、言葉を扱え、それぞれの部族ごとに独自の進化をとげていた。
紘汰と舞は、彼らをヘルヘイムの民と名付け一緒に暮らすことにした。そこには、紘汰の懺悔の意味もある。
もともとインベスは、ヘルヘイムの果実を食べた動物や人間などが変異したものだ。
インベスになったものは、もはや過去の人間や動物であったことを覚えていない。まさにインベスという新たな生物に生まれ変わってしまったというべきだろう。
紘汰は守るためといえ、その事実を知りながらも、インベスを斬ってきた。それをずっと悔いてきたのだ。だからこそ、紘汰はインベスを進化させた。
最もヘルヘイムの植物は繁殖力が高いため、楽園に入らないように、結界をはって、楽園とは別のものとして存在させている。
楽園側は楽園側の進化を、ヘルヘイム側はヘルヘイム側で進化している。
そのため舞は主に楽園にいて、紘汰が楽園とヘルヘイムの国とを行き来していた。
そう、事件のあったこの日、紘汰は運の悪いことに楽園側にいた。
最近、なぜかクラックが多発しているため、その対応について、舞と話し合うためであった。
「やっぱり、罠とか考えないとね。何者かわからにけど、好き勝手にさせていれば、何が起こるかわからないし」
以前にも侵略しようとしてきたことがあった。舞や紘汰としては、平和にこの世界にいたいだけなのに。
「ああ、ただその前に相手が何者か、一度確認する必要がある。次クラックが開いたら俺が飛び込むつもりだ」
紘汰の言葉に、舞は心配そうに紘汰を見つめる。
勿論紘汰の強さも舞は良く知っているが、ずっと一緒にいたからこそ、紘汰の事が本当に心配だ。
「心配するな。俺がやられるわけないだろう?だから、後のことは頼む」
そうやって、紘汰は舞を安心させるかのように笑いかけていた。
だが舞はそんなことに惑わされない。真剣な顔つきで紘汰を見る。
「紘汰、慢心は油断を生むわ。本当に気を付けてね。もうあなたの命は、あなた一人だけのものじゃないのよ」
そう、もう紘汰は一人じゃない。
ヘルヘイムの民の王となってしまった。当人が望む望まないではなく、もう決まってしまったことだ。
紘汰は苦笑しながらも、それでも優しい笑みを浮かべて舞を見つめた。
「舞は相変わらず心配性だな。大丈夫さ、今までだって、乗り越えて来たことだ。それに比べたら…」
紘汰は、そこで言葉を止めた。
何かの気配を感じていた。
紘汰はすぐさま、そちらに目を向ける。
目を向けた先にクラックが開き、突然怪我をしたヘルヘイムの民の一つ、蛇の部族の男が姿を現した。
その傷に驚き、紘汰は急いで駆け寄った。
そもそも、こういうとき本来来るはずの男がこないのも紘汰は不安になっている。
「何があったんだ」
「王よ。申し訳ありません。敵襲です。急に現れ、10人衆が今対応していますが…」
蛇の男は申し訳なさそうにそう話している。自分の傷などそっちのけで。
紘汰はこの異常事態に、さっと舞を見た。
「わかった、後は俺に任せろ。舞、傷の手当てを頼む」
舞は決心した表情で頷いていた。
舞としてもこの世界は紘汰とともに想像した世界。守りたいと思っているのは紘汰だけじゃない。
紘汰は舞に託すと、さっと光その姿を楽園側から消していた。