仮面ライダー鎧武 長編小説
□ヘルヘイムの民
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紘汰と舞が、ヘルヘイムの浸食から地球を救うため、禁断の果実と呼ばれる知恵の実の力を使って、地球上のヘルヘイムの植物と、インベスと呼ばれる怪物を連れて、命のかけらや光すらない世界へ来てから、もうかなり経っていた。
闇は、紘汰と舞の力に照らされ、命のない世界は、やがて命に満ち溢れる美しい世界をようしていた。
そこで、紘汰は新たにインベス達の進化へと着手した。
ヘルヘイムの植物を力を使って変質させ、その実を食べたものに、変化をもたらす、そう作り替えた。
やがて、インベス達は紘汰の思惑通り変化していき、知性をもつようになっていた。
紘汰と舞は、元インベスである彼らをヘルヘイムの民と呼ぶこととした。
紘汰は、はじまりの男、金色の髪に、右目だけ赤いオッドアイを持ち、銀の鎧に白いマントを羽織った、そんな姿でいた。
舞も、はじまりの女、金髪に、紘汰と同じく右目だけ赤いオッドアイで、白いワンピースにネックレスをつけている姿でいる。
彼らは、知恵の実の力により、人ではない存在となり、その力は運命すら覆すそんな力を持っている。
まさに神といえる力だ。
紘汰と舞と一瞬に楽園と呼ばれる、動物や植物で溢れる世界側にいた。
この世界は、滝や川などの水分もあり、地球よりも森に覆われて、自然あふれる世界だ。
本当に美しい世界。
紘汰と舞が初めに着手した世界だ。
「舞、そろそろヘルヘイムの民と会ってみようと思う」
実は、力を使って様子を見ることはあったが、直接会ったことが今までなかったのだ。
あまり関わらないようにと考えていたからだ。
強大な力は、いい影響だけ与えるとは限らない。
そこが怖かった。
「どうしたの?急に」
舞もそんな紘汰の気持ちを知っていた。
だからこそ驚いている。
こんなことを言い出したのは、初めてだ。
「争いが起こっている。種族による争いだ。…それを止めなければ、また悲しいことになる。俺達の望まない世界にはしたくない」
そう、もう彼らだけでは悲しい結末を迎えてしまう。
もちろん、神のような力を手にいれても、紘汰に未来を見る能力はない。
だが、身をもって知っている。
舞もまた、わかっている。
その悲しさを・・・。
「弱者が虐げられない、そんな世界を作りたい…よね」
紘汰は笑って頷いた。
そうそのために、頑張ってきたからだ。
ヘルヘイムの民もまた、紘汰と舞の民であることに変わりがない。
「戒斗の思い、ちゃんと叶えてやりたいからな…だから、行って何ができるかわからないけど、力で訴えるんじゃなくて、ちゃんと話たいんだ」
そう、この力を使っては意味がない。
ただ話し合って、何とかしたい。
ちゃんと話せば、わかってくれるはずだ。
紘汰のその思いに、舞はにっこり笑っていった。
「うん。紘汰、行ってきていいよ。この世界は、私と紘汰の世界だもの。ちゃんとしなきゃね。…こっちの楽園は私に任せて」
紘汰は舞の手をとる。
悩んでいた顔が晴れて、笑顔になっている。
舞もまた、笑顔を返した。
「舞ありがとう。行ってくるよ」
舞は頷いた。
紘汰は目を閉じた。
姿がみるみる、地球でいた葛葉紘汰の姿へ戻っていく。
こちらの方が、ちゃんと人として話せる。
そもそも、誠意を見せないといけない。
「気をつけてね」
舞は心配だったが、紘汰のその思いには、応援していた。
紘汰は、笑って頷くと、クラックを開いてヘルヘイムの世界へと旅立っていった。
もしこれから先、何があっても後悔はしない。
悲しいことがおこる前に止める・・・
そんなことを胸に・・・