仮面ライダー鎧武 長編小説

□休日が…
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「紘汰、そっち」

 ヘルヘイムの民の子達の元気な声が響いている。

「いくぜ」

 この星の王と思えない、サッカーのユニフォームをきた紘汰の姿がそこにあった。
 黒髪に黒い瞳。
 オーバーロードになる前の沢芽市にいたときの姿だ。
 皆でサッカーをしていた。
 紘汰の蹴ったシュートは見事にゴールに決まった。

「ヨッシャ」

 そう言って紘汰はガッツポーズをしている。

「酷いよ…子供相手に」

 狐の部族族長ゴンがそう嘆いた。
 紘汰の護衛をしている闇の部族ダークと鳥の部族イーグルは、木陰でそんな様子を見ながら、座ってみている。

「ごめん」

 紘汰は両手を合掌して、素直に謝る。
 大人げなかったと、反省しているようだ。

「わかれば宜しい」

 そんなゴンの頭を、狼の部族族長ロンが叩いた。
 これは、いつものゴンの手である。
 ロンはそれを知っているからこそ注意した。

「調子のり過ぎ」

「てへっ」

 ゴンは舌をだして笑った。
 紘汰はそんな様子に苦笑していた。

「いいですね。こういうの…」

「うん。王の顔が優しくなってる。ここ最近、戦いばっかで、大変だったもんね」

 なんだかんだ言って、ダークとイーグルの絆が強くなっている。
 ぶつかったりもしてたが、守りたいものは一緒。
 だからこそ、互いにわかり合える。

「いつもこんな感じなのか?」

 イーグルとダークの後ろに、黒い長い髪に青い目をした、イクスが現れた。
 紘汰と同じく禁断の果実の力を持っている。
 自分の世界を失ってないるため、紘汰と舞の世界に居候中である。

「そうね。…まあ久々にだけど。復興も終わったし、息抜きね」

 イーグルがくいっと背伸びをしながら言った。

「この時の紘汰様のお顔が優しくて好きです。…いつも何かを悩んだり無理されてますから…」

 ダークもそんな紘汰を見ながら、穏やかな表情になっていた。
 イクスは、じっと見てた。
 確かに、紘汰の感じがいつもより優しい。

「いいな…確かにこんなの。…平和ってこういうことなんだな」

 イクスもしばらく操られ、戦いに明け暮れていた。
 静かな時間ということ自体が久々である。

「息抜きしたら…あんま力入りすぎるともたないよ」

 イーグルがポンポンとイクスの肩を叩く。

「そうです。何もないときは、ゆっくり休むことが必要ですよ。我々もこうして休んでますし」

 ダークは珍しく笑顔で話した。

「そうだな…」

 そのとき、イクスは何か胸騒ぎがした。
 紘汰も試合中なのに動きを止めた。

「何かくる」

「なんだか、嫌な予感がする」

 紘汰はそのとき、黒い魔方陣のようなものに囲まれた。
 持ち前の運動神経のよさから、さっとその場から、飛んで逃げ出す。

 魔方陣から、占い師のような女が、現れた。
 手には水晶玉のようなものをもっていた。
 勿論、見覚えなんてない女だ。

「へえ、スゴいね。避けたんだ」

 占い師のような女は拍手している。
 それが紘汰を苛立たせた。

「誰だお前?この世界になんの用だ」

 紘汰は、さっきの穏やかな顔から、一転占い師の女を睨み付けている。
 ロンとゴンは紘汰を守るために、隣に立っていた。

「にゃは♪こんちは、僕ちんはアランっていうの、よろしくね♪なんか楽しそうだから、遊んでもらおうと思って」

 そういって、 水晶玉が光った。
 紘汰はロンとゴンを抱えてそこから走ってさける。
 紘汰が元たっていた場所には、また黒い魔方陣ができて帯状の光が立ち上っていた。
 残っていたらた思うと、ぞっとする。

「ロン、ゴン、逃げろ。あいつの狙いは俺だ」

 紘汰はそう言ってロンとゴンを逃がす。
 イクス、ダーク、イーグルはすぐに動いた。
 紘汰の回りに立って、守りを固めた。

「今はまずいんだろ?時間稼ぐからいけ」

 そう今の紘汰は、戦極ドライバーもロックシードも持っていなかった。
 本来の力も極ロックシードに移しているので、ほぼ人である。
 ここ最近平和だったので、遊ぶときは邪魔なため舞に預けているためだ。

 最も、知恵の実の効果なのか、身体能力や危険察知能力は、以前より格段にあがっている。

「すまない、イクス。頼む」

 確かに、何も装備がないまま相手できるほど、甘くは無さそうだ。
 このまま足手まといになるくらいなら、舞から返してもらったほうがいい。

「紘汰様についていきます。イーグル、貴方はイクスと一緒に時間を稼いでください」

 ダークの提案に、イーグルは不満があったが、確かに時間を稼がないとやばいので、とりあえず聞くことにした。
 
 イクス、イーグルは、アランという女を取り囲む。

「邪魔しないでほしいな。仕方ないな♪」

 アランは、大きな火の玉を出すと、二人に襲いかかる。
 イクスは盾を出して防ぐ。
 イーグルは軽やかによけた。

 紘汰とダークはこの間に、舞達の元に急いでいた。

「逃がさない」

 黒いロープのようなものが、紘汰の動きを封じるため、地面より出る。
 紘汰は、逃げようとしたが、右足を捕らえられる。
 ダークはすぐさま、紘汰の側にかけよって、紐を短刀で斬ろうとした。
 イクス、イーグルも動こうとしたが、アランが黒い鎧の物体を5体呼び出し襲わせる。
 そのせいで身動きがとれなくなってしまった。

「いいから、逃げろ」

 紘汰はダークにそう言ったが、そんなことで引き下がるダークではなかった。
 だがその時、ダークに向かって、黒いロープが絡み付く。
 身のこなしで、なんとか避けたが、紘汰は全身にロープが絡み付いて動けない。

「情けないよな…俺って」

 力がないと、守るどころか足手まといになっている。
 それでも、ダークにとってはこの人しかないと決めた人だ。
 近づいてくるアランに、ダークは斬りかかる。

「紘汰様に手を出すことは、私が許さない」

 ダークの猛攻を、あっさり避けて、衝撃波のようなもので弾き飛ばす。
 ダークは木に激しく打ち付けられた。

「へー。なんでこんな弱い奴守るかな?僕ちんわかんないや」

 そう言って紘汰の側にいく。
 紘汰をロープでぐるぐるにし、身動きをとれないようにしている。
 これじゃあ、抵抗のしようがない。

「ねえ、僕ちんに教えて♪にゃは、ここに、すごい力ある人いるんでしょ?…君はこの世界で人でいたから、気になってたんだけど、違ったみたいだね」

 アランは呼び出した、黒い剣を紘汰の首元に持っていく。

「知らないな」

 その一言に、黒い剣で首元にひとすじの赤い線をつけられた。
 
「次はかっ切るよ」

「やればいいじゃないか。…ここで命乞いをするとでも思ったのか?」

 本気でそう言っている。
 アランは思わぬ反応に困惑していた。
 普通なら泣いて命乞いをするものなのだが。

「それ以上、そのかたに触れるな」

 衝撃のショックから甦ったダークが、アランに向かっていく。
 紘汰を傷つけた、それだけでダークにとって許されぬ行為だ。
 もはや憎むべき相手。

「やめろ、ダーク。勝てる相手じゃない。…俺のことはいいから、逃げろ」

 いつもそうだ。
 紘汰は自分の身より、ヘルヘイムの民を守ることを優先してしまう。
 今回こそ、守らなければ。

「つまり君はこういうのが、弱いんだね♪わかったよ」

 アランはダークに向かって、地面よりロープをだす。
 ダークはさっきの衝撃が効いてか、逃げ切れないで捕まってしまった。
 イクス、イーグルも黒い鎧で手一杯だった。

「さあ、教えて♪禁断の果実を持つのはだあれだ♪」

 そう言って、ダークの首元にさっきの黒い剣を当てる。
 このままでは、紘汰様が…

「紘汰様、ダメです。私はどうなってもいいので」

 ダークはそう言ったが、ほっとける状況ではない。
 ヘルヘイムの民を傷つけるわけにはいかない。
 それが紘汰の心情だ。

「あのな、ダーク。俺はお前を失いたくない。…教える。だから、そいつに危害を加えるな。俺だけにしてくれ」

 アランは剣を押し当てたまま、紘汰をみる。

「珍しいものを見たよ♪まさか自分の命より、他人の命とるなんて♪で、誰」

「信用されないと思うが、俺だよ。…今は、預けているから持ってないが」

 紘汰の言葉にアランは、にこりと笑った。

「確認したかっただけ。…やっぱ当たってたんだね。じゃあ、一緒に来てね♪」

 アランはダークに剣を当てたまま、紘汰の側にきた。

「やめろ、紘汰を離せ」

 イクスは黒い鎧を攻撃しながら、アランに向かって叫ぶ。
 イーグルも飛んでいこうとしたが、その前にアランにが紘汰達の地面に、あの魔方陣をだし、3人とも姿を消した。

「王…いや、返してよ」

 もはや何もない地面にイーグルは、膝をつく。
 イクスは怒りで、力を暴走させ、黒い鎧を全て撃破した。

「紘汰を助けられなかった…俺は何をやってんだ」

 もはやなす術もなく、崩れおちる。




 
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