仮面ライダー鎧武 長編小説

□Light to turn on darkness of
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 その星は、一切の光も一欠けらの命もない世界だ。
 あるのはどこまでも広がる荒野。
 不揃いのゴツゴツとした岩がそこら中にある。
 暗いその世界に、今いるのはインベスと呼ばれる怪物と、ヘルヘイムの植物のみだ。
 生命と言っていいものなのかわからない。

「異様だよな」

 そう、荒野に広がる崖の上で、この世界の神ともいえる葛葉紘汰がそうつぶやいていた。
 金色の髪が、暗いこの世界を照らす唯一の光である。

「そうだね。紘汰はどうしていきたいの?」

 傍らにいる、始まりの女と呼ばれる金色のセミロングの髪に右目だけ赤い姿をした、高司舞がそう話しかけた。
 彼らは、故郷である地球を救うため、誰にも知られていないこの星に、地球のインベスとヘルヘイムの植物を移動させてきた。
 彼ら自身、もう人でないため地球に長居することが出来なくなっている。
 そのため、彼らはこの星にやってきていた。

「まずは、水と光だよな」

 生命を作り出したとしても、生きていける環境ではない。
 かなり困難な道だ。
 光にしてもほんとうに届かない世界。
 重く厚い雲が覆っている。

「そうだね。この力でどこまでできるかわからないけど、頑張ろう」

「ああ…やらなきゃ、何も始まらない。そのための力だからな」

 紘汰の言葉に舞はそっと頷いていた。
 そのために、紘汰とともにこの星にやってきた。
 自分たちが理想とする世界を一から創造するために。
 戒斗のためにも、沢芽市にいるみんなのためにも頑張らなきゃいけない。

 紘汰は手始めに、空に向って力を放っている。舞もすぐに手伝って、虚空に手を翳し力を放つ。

 だが思った以上に難しい。
 舞は思わず肩で息をする。
 かなりの力を使ったため、しんどそうだ。
 でも、舞の負けん気の強さで頑張ろうとする。
 その様子に気づいた紘汰が舞に話しかける。

「大丈夫か舞。…焦らなくていいんだ。だって、俺達には時間がたっぷりあるんだから」

 舞はそっと頷いた。
 確かに無理する必要はない。
 あの時と違い、急がなくていい。
 そもそも、ここは私たちの世界なのだから…

「そうだね…ゆっくり進もう」

 なんだか舞は安心していた。
 そもそも、紘汰の希望を信じてやってきたのだから。

 まるで目の前の厚い壁を壊すかのように、力を使っている。
 本当に厚い壁で、なかなか壊せない。
 光を与えるだけでも、こんなにきびしいなんて。
 紘汰はそれでもがんばっている。
 私たちはあきらめるわけにはいかないから。

「舞、無理はしなくていいからな。俺がいるんだから」

「無理なんてしてない。紘汰こそ、無理しなくていいから…そのために私もいるんだから」

 一人では決してできない。
 私も紘汰がいるから、頑張れる。

「ありがとうな舞。舞がいるから俺、頑張れる」

 紘汰も同じ気持ちなのは正直嬉しかった。

 その後何度か力を使っていく。
 本当にくじけそうになることもあった。
 だけど、紘汰に励まされ、私もがんばることができた。

「紘汰…あれを見て」

 どれくらい月日がたったのかわからないが、一筋の光がこのくらい世界に差し込んでいる。
 その神々しい光に、私と紘汰は顔を見合せあい、本当に喜んだ。

「ようやくだ…やっとこれで前に進める」

 やっぱり紘汰もどこか不安だったんだ。
 多分私の事を気遣って、ずっとそれを出さずにいたんだ。

「うん。本当だね。…これで前に進める」

 かなり遅くてもいい。
 一歩ずつでも前に進むことが意味がある。
 これで見通しがたったことは、どこか報われた気がする。

 この調子で、私は紘汰と共に力を使って、天候を操る術を手に入れた。
 それにより雨を降らせることができるようになっていた。
 紘汰とともに創りあげた湖に雨を降らせ、ようやくこの世界に水を与えることができる。
 光と水…
 それだけでも、かなりの進歩だ。

「生命をつくれる下準備はできたな」

「うん。そうだよね。…でもここからがたいへんだよね」

 そう、まだ生命と呼んでいいのかわからない、インベスのみしかいない。
 確かにインベスが私たちを襲ってくることはないけど、これじゃあ、新しい生命へ変化させても、襲われるだけ。

「そうだな…俺はこの世界を二つに分けたい」

 その言葉に、私は小首をかしげていた。

「どういう意味?」

「インベスだって、元は人や動物などの生命体だから…インベスを進化させたいんだ。それで俺がやってきたことの罪滅ぼしにはならないけど」

 紘汰は数多くのインベスを退治してきた。
 それは、人や動物だったものに手をかけたことと同じ意味をもつ。
 ずっと紘汰は気にしていた。

「そう…わかった。紘汰の好きなようにしたらいい。だって、私は紘汰の夢を見届けるって決めているんだから」

 そのために私はこの世界にいる。
 紘汰が夢見る世界は、私の夢でもある。
 紘汰なら信じられる。
 紘汰は私にとって希望なのだから。
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