仮面ライダー鎧武短・中編&その他集

□最悪のゲーム
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 この日、光実は紘汰に呼ばれていた。
 相談したいことがあるらしい。

 呉島光実は、とある事件のおり、その命を助けてもらうため、葛葉紘汰の手により、オーバーロードになった。
 オーバーロードは、ヘルヘイムの果実以外は食事を受け付けなくなる。後は傷の治りが早く、よっぴどの攻撃を受けない限り死なない。
 そして、まだ使いこなせてないが、ヘルヘイムの植物を操ったりなど、不思議な能力を使える。
 
 そもそも、今光実がいるこの世界は、神の力とも言える禁断の果実を手にした、葛葉紘汰と高司舞によって創られた世界。
 楽園とよばれる、動物や植物に溢れる美しい世界と、ヘルヘイムの世界と呼ばれる、インベスが進化し、オーバーロードのような能力を手にいれた、世界の二つで構成されている。

 今はヘルヘイムの世界と呼ばれる側にいる。
 ヘルヘイムの植物と言われる果実、もっとも紘汰と舞の手により、金色の果実に変化しているが、そこら中に巻き付いている世界だ。
 インベスの進化した、ヘルヘイムの民の食事も同じく、果実であるため食べ物にも困らない。
 
「あっ、ウルフ…紘汰さん見かけませんでした」

 ウルフとは、ヘルヘイムの民であり、狼の部族長だ。
 何より、紘汰のことを王とあおぎ、紘汰以外に忠誠を誓わないという外見が狼のような男だ。
 主にヘルヘイムの世界の警備をしている。

「それが、今日は見てない…珍しいこともあるもんだ。楽園側にいるんじゃないか?」

 おかしいと思った。
 紘汰との約束は、ヘルヘイムの世界で落ち合うとなっていた。
 なにかが妙に引っ掛かる。

「ありがとう。探してみます」

「俺も別を探す。何かあったら困るからな。…全く、うちの王は呑気なもんだ」

 軽口をたたいているが、ウルフも不安になっていた。
 ウルフと別れてしばらくいくと、光実は異変を感じ取り、立ち止まる。 

「助けてください。終われているんです」

 見たことのない、少年と少女がそこにいた。
 光実は思わず身構える。

「追われてる、誰に?それに、あんた達は一体?」

 少年と少女は無言で光実の背後に回ると、向こうからやって来る少年を指差した。
 光実はじっと見つめる。

「その子達を渡せ。…その少女が…」

 追いかけた少年がそう話した瞬間、ここにいる皆が光に包まれた。
 眩しさのあまり、光実は目を閉じる。

 頭がボンヤリする。
 僕は、そのまま意識を失った。


 気がついたら、あの助けを求めた少年と一緒にいた。
 一緒にいた少女の姿が消えている。
 さらには追いかけてきた少年の姿もない。

「ここは?」

 辺りを見回すと、周りは歴史書等にのっていた、江戸時代のような風景だった。
 侍や町娘、着物を着た人達が行き交っている。

「山陽ランドと呼ばれる場所。僕たちの故郷。…まさか、こんなことになるなんて」

 少年は必死に少女を探している。
 光実は、見覚えのない世界を、確かめるように歩く。
 恐らくは異空間に飛ばされたんだろう。
 自分のいた、ヘルヘイムの世界とは全く異質な世界だ。
 呉島光実は、不安を覚えた。
 そもそも、まだクラックと呼ばれる、時空間移動できるチャックなようなものだが、それを安定して使えない。
 つまり、ヘルヘイムの世界に戻る術がない。

「帰るにも帰れないか…」

 どの様に来たのかもわかっていない。光ったと思ったら、ここにいたためだ。

 舞さん紘汰さん、心配しているだろうな。
 そもそも、あの世界に見当たらない、紘汰さんなんて、特に自分としても心配だ。
 早く帰りたい。
 光実は正直そう思っていた。

「僕は雪弥、この世界の住民。一緒にいた紗綾を探している。…一緒に探してくれませんか?」

 正直関わりたくなかったが、帰る術がない上に、この世界の情報も必要。
 ここは、一応のるしかないか…。

「分かりました」

 光実はそういうと、雪弥とともに探す。
 町中には、別の少年と少女の人相書きがいくつか、貼られている。
 懸賞金もかけられているようだ。
 その中に、あの、追っかけてきたあの少年も入っていた。
 何をしたかなどの罪状は書かれていない。

 あの少年は何だったんだろう?
 光実は疑問に思っていた。

「運命の巫女より、運命すら覆す力を手にいれることができれば、自分の世界に戻ることができる」

 ま、舞さん…
 ヘルヘイムの世界にいるはずの舞、それも人間の姿をした舞が、そこにいる。
 光実は驚いた。

「なにを、いっているんですか?舞さん」

 だが返事なく、舞は姿を消した。
 まるで幻影だ。

「これはゲームだ。陣を取りながら、運命の巫女を見つける。…誰が本物で誰が偽物か、気を付けなければならない。さあミッチ、お前は元の世界に戻れるかな?」

 今度は、紘汰の姿をした青年が突如姿を現した。
 舞と同じく、人間の頃の姿をしていた。
 そもそも、この人を探してたらこんなことに、なったのだ。

「紘汰さん、どうして…そもそも約束は…」

 紘汰もまた、なにも言わず姿を消した。

 一体なんなんだ。
 光実は訳がわからなくなっていた。

「陣を取るにはその国の姫より、国玉を貰うだけだ。…ただし、間違えると光実、お前は存在を消される。気をつけろ」

 貴虎兄さん?
 一番以外な人物の登場に、思考能力が低下する。

「兄さんなぜ、ここに?」

 貴虎もまた、幻影のように姿を消した。
 どうやら、全て本物ではなく、この世界を説明するための、偽物のようだ。
 
 先程の説明によると、
 自分の領地をきめ、他の領地から国玉を姫からとりにいく。ゲームを終わらすには、運命の巫女を探すのみ。姫から国玉をとる際は、偽物もいて、本物以外から受けとると、僕の存在が消される。

 しかしなぜ、貴虎兄さんが?
 あとは、舞さんと紘汰さんも?
 僕の意識に働きかけるためなのか?
 その疑問符で一杯になる。
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