仮面ライダー鎧武短・中編&その他集
□少年は何を思う
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どこかに、ある小さな無人島
そこに教育施設が集まり、夏休み中合宿が行われる。
そんな説明を受けていた。
「全員じゃないんだが、帰ってきたものが、一応におかしいらしい。…何かに取りつかれたようになるって。変な話だろ?」
ダンスステージで踊る、高司舞を見ていた、葛葉紘汰に、ビートライダーズのリーダー格のザックが話しかけてきた。
「ふーん、何かにね…で、ちょうどこの体だから、調査してほしいといったとこか?…まあ、暇だしいいけど。でも、俺戸籍とかおかしいだろ。どうやって、合宿に参加するんだ?」
そもそも訳あって、子供の体になっているが、大人な紘汰だ。
それに、今ではこの世界にすら住んでいない。
「そこは、ミッチが貴虎に頼むって…なんだ、その目?」
紘汰は怒りの眼差しで、ザックを見つめている。
子供になったのを知っているのは、舞と、ミッチこと呉島光実と、ザックのみだ。
「なんで、貴虎に話したんだ。…必要以上の人間に、俺がこんな姿だと知られたくない」
当人としても、かなり恥ずかしい。
まして呉島貴虎と言えば、紘汰の実の姉である、晶の夫だ。さらに親友であり仲間である呉島光実の兄だ。
そもそも、紘汰自身、貴虎にこの世界の事を任している。そんな関係だ。
なのに、こんな姿で帰還しているなんて知られたら、絶対に笑われる。
「気にするな…可愛い姿じゃないか」
ザックはポンっと、紘汰の肩に手をおいた。
その顔は笑いを堪えている。
「何が可愛いだ。…たくっ…バカにするな…こっちはこれで結構ショックなんだから」
今頃、自分の世界に戻っている筈だった…。
そして、いつものあの騒がしいけど、平和な生活を送っている筈であった。
まさか、こんな事になるとは思ってもみなかった。
「まあ、落ち着けよ。…その姿で何を言われようが、こわくない」
そう言いながら、ザックは笑っている。
紘汰は、だんだん腹が立ってきた。
「本気で力を使うぞ…全く…なんで、俺ってついてないんだ…」
もはや頭を抱えていた。
何かにつけて、巻き込まれ、ひどい目にあってきた。
「まあまあ、落ち着け。子供らしくないぞ…」
「だから、子供じゃねえ…」
そもそも、大人だし。こんな生意気な子供がいたら、厄介だろう。
「あと、あそこで踊ってる、三日月美恵子の妹菖蒲ちゃんって子も参加させられる。怪しいから、心配になって、俺に相談してきた」
そこが原点か…
「つまり、守れってことだな。…わかった。しかし相変わらず、こっちもおかしな事件が起きるんだな…」
紘汰の言葉に、ザックは申し訳なさそうにしている。
「折角、守ってもらったのにな…お前と舞に」
紘汰は笑って、首を横にふった。
「それについては、気にすんな。…好きでやったことだ。…あっ、ダンス終わったみたいだな」
少女姿ではあるが、久しぶりにチーム鎧武の衣装に身を包んで、踊れた舞が嬉しそうに、駆け寄ってきた。
「ザック、ありがとう。楽しかった。…紘汰も、待たせてごめんね」
その笑顔に、紘汰も思わず笑顔になる。
「構わないよ…舞が楽しそうにダンスする姿を見れて、嬉しかった。…ただ、明日からは、俺いないから。舞は気にせず、ダンスしててくれ」
舞はどうしたの?
という顔をしている。
「ちょっと、紘汰に頼み事をな。…大丈夫だから、心配するな。舞は、ビートライダーズとして、踊ってていいから」
舞は首を傾げている。
「紘汰に何をさせる気?」
「調査と護衛だよ。…心配ないから、気にするな。今の俺にしか出来ないことだから。…どうした?」
舞はじっと、紘汰を見つめている。
心配しているようだ。
「紘汰ってお人好しだから、頼まれると断れない…けど、その体じゃあ…無理は絶対に、しないで。約束して」
その目は真剣だった。
紘汰は、笑顔で答える。
「無理はしない。…約束する。だから、舞はここで踊っててほしい。…ミッチも舞の側にいるから、大丈夫だ。ザックもいるしな」
舞の身に何かあるということはない。
紘汰もそれが、心配だから。
「俺はついでなのか?… まあいいが。じゃあ、紘汰そう言うことだから、頼む」
紘汰は、笑顔で頷いた。