仮面ライダー鎧武短・中編&その他集

□光実の災難
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 そこは地下牢のようだ。
 ぽたぽたと土壁が水がしたたり落ちている。
 僕は、開かない牢を憎らしげに見ていた。

 なんでこんなことに・・・

 気付いたら異世界に連れられてきて、つかまるなんて・・・
 そもそも紘汰さんじゃあるまいし・・・

 しかし、ベルト取られたうえにクラックが開けない・・・
 おそらくあのゴールデンブドウロックシードを、取り上げられたせいだ・・・
 何をやってんだろ・・・

 

 そもそも事の発端は、いつもの如くスネイクさんとヘルヘイムの森を歩いているときだった。
 急に
 黒い長い髪の赤い着物
 青い帯に赤い帯紐
 色白に、黒い瞳・・・
 日本人形のような少女が現れ、その目を見ているうちにこの世界へ・・・

 この世界に連れられた上に、気付いたら、自分でロックシードと戦極ドライバーを渡すなんて・・・
 どうかしている。

「狙いはなんなんだ?」

 もはや誰もいない牢に向って叫んだ。
 こういうことは、紘汰さんや舞さんが気付いてくれれば、何とかしてくれるだろうけど・・・
 ただ、おそらくどこに連れられたのかわかるのが難しいだろう。

 だって、あきらかに異世界だから・・・

「あら、目が覚めましたか」

 黄色い着物を着た女性が、牢の傍にやってきた。
 一体何者かはわからない。

「あんたは?」

 僕は不機嫌そうに言ってみた。
 そもそも、本当に不機嫌だ・・・
 勝手に巻き込まれる紘汰さんの気持ちが、今よくわかりました。

「雛菊と申します。巫女様よりあなたをお世話するようにと賜りました」

 雛菊というその女性の青い目が、じっと僕をとらえている。
 なんだか、怖い・・・
 そもそも、生気のない目をしている。

「お世話ね・・・牢に入れられてたら、何もできない」

 雛菊はあっさりと、牢の鍵を開ける。
 意外な行動に正直驚いた。
 それなら、わざわざ牢に入れとく必要ないだろう・・・

 それも、僕はこういうのなら逃げると・・・

「逃げても無駄です。そもそも逃げ場もないでしょうし、貴方はこうげきするできない」

 そう、確かに丸腰だ・・・
 これを納得させるためにわざわざこの牢獄にいれたのか・・・

「どうする気だ?」

 あまりいいものではないだろうな・・・
 生気のない目でじっとみる。

「巫女様より信託がありました。…あなたが桔梗姫の守り人であると」

 意味が分からない。
 桔梗姫がなんだ?
 その前に、巫女って?
 第一、なんで守り人?

「帰らせてくれないか?僕は自分の世界に戻る」

 守り人でも、舞さんの守り人ならいくらでもするが、何が好き好んで、こんな訳の分からない世界を・・・

「それは無理です。…貴方をこの世界に召還したものこそ、運命の女神様ですから」

 運命の女神・・・
 いや、まあ神のような人を知っているんで、あながちびっくりはしないが・・・
 ただ、ヘルヘイムは関係なさそう。

「帰れないわけか…つまりその運命の女神を探し出したら、帰れるわけだな」

 それか、あの二人かイクスがこの世界に気付いたら・・・
 あの二人になったら祈るけど、ここの神様になんて祈りたくもない。

「そのとおりです。逃げれば逃げるだけ、苦痛に巻き込まれるだけです」

 なるほど・・・
 かといって言いなりもな。
 まあ、どうすることもできない。
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