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□真実と自分の気持ち
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日曜日、私は近くのカフェに来ていた。
私と波風さんの真実を知ってるであろう、あの人に会うために。


「瑠那、お待たせ」

「クシナ、お休みの日にごめんなさい」

「かまわないわ。どうしたってばね」


きっと真実を知っているであろう、クシナが来た。


「…それで、何かあったの?」


波風さんの隣に居るのは私じゃなきゃ駄目だって、波風さんと一緒に幸せになれってクシナは言っていた。

きっとクシナは何か知っている。
私と波風さんの本当の関係を。


「…教えて欲しいの。私と波風さんの本当の関係を」


そう言えばクシナの表情は少しだけ強張った。
目を左右に泳がせて、置かれた水を少し飲む。


「思い出したの?」

「…ううん、思い出せない。でもあと少しで何か分かりそうで…」

「…そう」


クシナは悩んだ素振りを見せたが「ちゃんと真実に向き合えるの?」と聞かれて頷くと、ゆっくり口を開いて話し始めた。


「瑠那とミナトは付き合っていたの」


その言葉を皮切りに、私は自分の知らない自分を知ることになる。


波風さんは私に一目惚れをした。
そして私も波風さんの優しさに一目惚れをして。

波風さんとクシナは幼なじみらしく、そしてそれを知っていた私もクシナに相談していた。

他の社員さんから見れば私達はバレバレの両思い。
もどかしく見守っていたが、波風さんからの告白。

波風さんは結婚を前提に付き合おうと言ってくれて、私もそれに頷く。


周りが羨むような恋人同士だった私達。
互いが互いを想いあって、たまにそれが原因でケンカするときもあったけど、私も波風さんも幸せで。

結婚についても話が出ていた矢先。


「瑠那が事故にあったのよ…」

「……」

「大丈夫、瑠那?顔が真っ青だってばね」

「あ…ごめん。少しびっくりしちゃって…」


びっくりなんて言葉じゃ足りないくらい、驚いた。
波風さんは今までそんな素振りを一度も見せずに私に接してきてくれた。


「今の瑠那はミナトの事、どう思っているの?」

「今の、私?」


波風さんが出張で居なかったときは寂しいかった。
波風さんに好きな人が居ると知ったときは凄くショックだった。
波風さんの笑顔を見ると凄く安心した。

この気持ちを恋だと言わないなら、他に何と言うのだろうか。


「…好き。波風さんとの幸せな思い出は無いけど、私は波風さんが好き」

「応援するわ!」

「でも…、波風さんはまだ私の事、好きで居てくれているかな」

「そんなの当たり前だってばね!ミナトはいつも『早く瑠那の記憶が戻って欲しい』って言ってるのよ」

「……そうなんだ」


記憶が戻って欲しい。
その言葉は今の私を受け入れてはくれないようにも聞こえた。

(やっぱり波風さんは…)

今の私じゃなくて、幸せな思い出が沢山ある私が好きなのかな。

そう思うとクシナの言葉も喜べなかった。





(嫉妬する。もう1人の私に)




 
 

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