main(作者用)

□崩壊
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「んっ…ふっぁ…」
縋り付くように舌を絡め、首に腕を回す。
「んぁ…ぷはっ」
prrrr.prrrr…
着信音が鳴り響く。
口を離すと芥川はへなへなとその場に座り込む。それを全く見る事無く携帯を取り出す太宰。
「あ、中也? うん…。分かった、すぐ行くよ」
ハンガーに掛けてあるコートを手に取る。
「先輩…」
「何?」
コートを着ると、携帯をポケットに入れ、芥川に向き直る。
「もう…行っちゃっうんですか?」
「見て分かんないの?」
冷たく言い放つ太宰の目に感情はない。芥川は酷く怯えた様に俯く。
「…無駄な時間取らせないでよね」
じゃあ、と関係を断つように扉を閉めた。
いくら好きだと貴方に伝え、好意を向けても、振り向いてはくれない。そんなことは分かっているのに、それでも、貴方を求めてしまうのは、少しでも貴方に見てもらいから、少しでも一緒にいたいから。
涙は出ないけれど、心が潰されていくのがわかる。




芥川が廊下を歩いていると、ちょうど首領の部屋から出てきた中原と鉢合わせした。
「!…芥川、手前か」
「丁度良かった。話があります。」
「此処じゃアレだろ、」
中原に促され、場所を変える。


「何だよ、話しって」
「太宰さんと、最近どうなんですか」
意表をつかれた質問をされ、気まずそうに顔を赤らめ、目を逸らす。
「そ、そんなこと手前には関係ないだろっ!」
関係ない? 巫山戯るな。
「よくもそんな純粋ぶった態度が取れますね。」
汚物を見るような目で中原を見る芥川に驚きを隠しきれないように目を見開く。
「首領にも抱かれてる癖に」
中原の表情が曇がかる。
「あんなオッサンに、好きで抱かれてるわけじゃねぇよ」
太宰の居ないときに首領の部屋から時折聞こえるあの声、聞きたくなくても聞こえる声。
「なんでっ! なんであの人から愛されてるのに! 貴方は!」
いつしか芥川は中原の首を締めていた。
「がっ、はっ!」
「何で!? 何で!? 僕じゃないんだ! 何でっ…」
首を締める力は緩まず、じわじわと意識が遠のいている中、
「…芥川?」
太宰が目の前に現れた。
芥川はパッと手を離し、中原は膝を着いた
「がはっ!、ごほっ!」
咳き込む中原に駆け寄り、背中をさする。
「ぁ…」
芥川はそれを見て恐怖で蹲る。体を抱えて震えていた。
中原が落ち着いた頃合を見て、芥川に振り返る。
「もう、全部終わりにしよう」
決定的に太宰が決別の意を示した言葉。
「ぁ…いや…ぃっ」
太宰に擦り寄り、足を掴もうとするが、その手も虚しく払い除けられる。
「触るな」
涙がこらえきれなくなった。芥川は、フラつく足でその場を離れた。


屋上。

「う あ"っ、い"っ」

ずっと枯れていた涙が今になって溢れ出る。

嫌われてしまった。もうあの頃には二度と戻ることは出来ない。

「あ"っあぁっ」

あの顔は、あの声は、もう聞くことはできない。

せめて、

1度でもいいから、

貴方の笑っている顔が見たかった。

空っぽの心を満たすように月を眺め、空へと身を投げた。
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