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□桜桃、錯乱簿
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「ねぇ、芥川君」
太宰さんが桜桃を食べながらはたと思い出したように訪ねる。
「君は桜桃の茎を舌で結べるかい?」
「・・・?」
桜桃の茎を舌で結ぶ?意味が良く分からない。
「あー、やってみた方がいいね」
そう言い、桜桃を茎ごと口に入れ、ゴロゴロとしたを動かす。
暫くして、ぺっと吐き出すと、茎は桜桃の種を囲む様にくるりと綺麗に結ばれていた。
「これは結構難しいから、芥川くんは結ぶだけね。
ほら、やってご覧?」
桜桃をずいっと口に押し付けられ、仕方なく口に入れて、実を食べて茎を舌で動かす。太宰はものの数分で出来ていたが、僕にはかなり難易度が高い。
普段使わない筋肉を使っている様でだんだんとしたが疲れてきた。
「あれ? 芥川くん出来ないの??」
太宰さんがニタニタと笑みを浮かべる。
堪らず茎を吐き出す。
「・・・こんなの出来るわけないです」
「仕方ないなあ、私が手伝ってあげよう」
そう言って自ら桜桃を食べたかと思うと、顔をひっつくくらい近づけてきた。
そして・・・
「んっ・・・ふぅっ・・・!」
口に舌を侵入させて来た。
桜桃の甘酸っぱいみずみずしい風味が口いっぱいに広がる。
この人はなんで男の僕にキスなんかしているんだろう。
「んむっ・・・!んんっ・・・!」
分からない、全くもって分からない。
舌を絡めて茎を結ぼうと太宰さんが口内をまさぐる。
くちゅりと水音が立ち、身体中の体温が上がり頭がぼうっとする。
「ぅっ・・・んぅっ・・・!」
息が出来ず、太宰さんの胸を叩くと、唇が離された。銀色の糸があいだに伝う。
「はぁっ・・・はぁっ・・・」
「ほら、結べたよ」
茎を舌の上にのせて見せる。
この人は、本当に何がしたいんだろうか。
「貴方はっ、僕を弄んで楽しいですかっ・・・・・
何時も何時も僕のこと馬鹿にしたみたいに・・・!」
「・・・それは、本気にしていいって事?」
「・・・?」
「・・・厭、何でもないよ」
何でそんな悲しそうな顔をするんだ。
これじゃ、まるで・・・
「太宰さん・・・」
僕の言葉を聞きたくないと言わんばかりに言葉を遮る。
「ねぇ、芥川君。
私と心中する気はないかい?」
「・・・」
僕は、---と言う言葉を呑み込み、赤らんだ顔を隠す様に俯くと、枯れた筈の涙が頬を伝う、太宰さんに抱き締められると、震える腕で、抱き返した。