main(作者用)

□桜桃、錯乱簿
1ページ/2ページ


「ねぇ、芥川君」

太宰さんが桜桃を食べながらはたと思い出したように訪ねる。

「君は桜桃の茎を舌で結べるかい?」

「・・・?」

桜桃の茎を舌で結ぶ?意味が良く分からない。

「あー、やってみた方がいいね」

そう言い、桜桃を茎ごと口に入れ、ゴロゴロとしたを動かす。

暫くして、ぺっと吐き出すと、茎は桜桃の種を囲む様にくるりと綺麗に結ばれていた。

「これは結構難しいから、芥川くんは結ぶだけね。
ほら、やってご覧?」

桜桃をずいっと口に押し付けられ、仕方なく口に入れて、実を食べて茎を舌で動かす。太宰はものの数分で出来ていたが、僕にはかなり難易度が高い。
普段使わない筋肉を使っている様でだんだんとしたが疲れてきた。

「あれ? 芥川くん出来ないの??」

太宰さんがニタニタと笑みを浮かべる。
堪らず茎を吐き出す。

「・・・こんなの出来るわけないです」

「仕方ないなあ、私が手伝ってあげよう」

そう言って自ら桜桃を食べたかと思うと、顔をひっつくくらい近づけてきた。
そして・・・

「んっ・・・ふぅっ・・・!」

口に舌を侵入させて来た。
桜桃の甘酸っぱいみずみずしい風味が口いっぱいに広がる。
この人はなんで男の僕にキスなんかしているんだろう。

「んむっ・・・!んんっ・・・!」

分からない、全くもって分からない。
舌を絡めて茎を結ぼうと太宰さんが口内をまさぐる。
くちゅりと水音が立ち、身体中の体温が上がり頭がぼうっとする。

「ぅっ・・・んぅっ・・・!」

息が出来ず、太宰さんの胸を叩くと、唇が離された。銀色の糸があいだに伝う。

「はぁっ・・・はぁっ・・・」

「ほら、結べたよ」

茎を舌の上にのせて見せる。
この人は、本当に何がしたいんだろうか。

「貴方はっ、僕を弄んで楽しいですかっ・・・・・
何時も何時も僕のこと馬鹿にしたみたいに・・・!」

「・・・それは、本気にしていいって事?」

「・・・?」

「・・・厭、何でもないよ」

何でそんな悲しそうな顔をするんだ。
これじゃ、まるで・・・

「太宰さん・・・」

僕の言葉を聞きたくないと言わんばかりに言葉を遮る。

「ねぇ、芥川君。


私と心中する気はないかい?」

「・・・」

僕は、---と言う言葉を呑み込み、赤らんだ顔を隠す様に俯くと、枯れた筈の涙が頬を伝う、太宰さんに抱き締められると、震える腕で、抱き返した。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ