Black, Kind, Memories
□第1章
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『……ん…』
目が覚めると、自分の部屋だった。
昨日自分の部屋で寝たから当たり前のことだけど…。
…小さなころから、よく夢を見る。
いつも同じ場面の、変わらない夢。
あたしは小さくため息をついて、部活に行く準備を始めた。
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そんな土曜日の朝。
おはようございます、相田瑠衣です!
雷門中サッカー部で副監督兼マネージャーをしています。
朝起きると、リビングにはスポーツトレーナーをしている父がいた。
『おはよう、パパ』
景虎「おぉ瑠衣!今日も可愛いぞ!」
『何それ…お姉ちゃんは?』
景虎「もう学校行ったぞ…」
『そっか、高校遠いもんね…』
お姉ちゃんの通う誠凛高校はあたしたちの家から少し遠く、お姉ちゃんは少し早めに家を出る。
あたしが通っている雷門中は家から近いから、遅めに家を出ても大丈夫なのである。
今日は学校は休みで、お姉ちゃんが監督をしているバスケ部は今日は一日練習なんだけどね。
まぁあたしも練習はあるが、家が近いのでいつもゆっくり支度をする。
早く朝ごはん食べろよ、という父・景虎に返事をし、テーブルに目を向ける。
『…あれ?』
あたしはそこにあるものを見つけた。
『パパ、あれ』
景虎「…ん?」
『お姉ちゃんのお弁当?』
景虎「…え?」
あたしが指を差した方向には、お姉ちゃんのものと思われるお弁当。
『まさか、お姉ちゃん…』
景虎「…忘れたのか…」
そんなわけで。
景虎「本当に大丈夫か!?パパも一緒に行こうか?」
『大丈夫!もう子どもじゃないし!!行って来まーす!』
そう言って家を出て、雷門中ではなく駅に向かった。
結局、お弁当はあたしが届けるところになったのだ。
景虎「…子どもじゃない、ねぇ…」
あたしの背を見ながら、パパは小さく呟いた。
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