Black, Kind, Memories
□第4章
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「おい風磨!早く料理運びやがれ!!」
風磨「親父うるせぇ!!瑠衣、後で話そうな」
厨房から怒号が聞こえ、須崎くんはそう言って戻っていく。
『…須崎風磨くん…』
拓人「…瑠衣の幼馴染みと名乗っていたが…」
火神「あいつのこと知ってんのか?」
眉を顰める拓人とこちらを向く火神さんに、俯きながら告げる。
『…会った記憶は…無いんです』
倉間「じゃああいつは誰かと瑠衣を勘違いしているってことか」
『でも…なんか、懐かしい感じがするんです…』
高尾「懐かしい?会ったことないのに?」
あたしは小さく首を振る。
そこにいたみんながあたしを見ていた。
『…思えば、この町に来た時からなんです』
天馬「一度来たことがあるってことじゃないんですか?」
『うーん、そうなのかな…』
あたしの呟きに、皆が黙り込む。
遠慮がちに口を開いたのはお姉ちゃんだった。
リコ「…ごめん、瑠衣。実はそうなの」
お姉ちゃんの笑みに、あたしは目を瞬いた。
『え?』
リコ「天馬くんの言う通り、瑠衣はここに一度来たことがあるわ。私も一緒だけどね」
黄瀬「じゃああいつが瑠衣っちと幼馴染みっていうのは…」
『嘘じゃない、なんだ…』
でもどうしてだろう、本当でもない気がする…。
リコ「…今思い出したけど、瑠衣、あの子とよく遊んでたわよ?…瑠衣が小さい時だったから覚えてないのも無理ないわ」
『…そう、なのかな…』
考え込むあたしに、蘭丸が声をかけた。
蘭丸「…瑠衣、心配するな。瑠衣は、俺と神童の幼馴染みだからな」
少しだけ微笑みながら、蘭丸はそう言ってくれた。
『…うんっ』
笑顔で頷き、料理が出されるのを待った。
右隣で苦しそうな顔をするあたしのお姉ちゃんにと、あたし達を見つめる須崎くんに、気付かないまま。
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