Black, Kind, Memories

□第5章
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翌日、朝6時。

拓人や蘭丸たちと同じ部屋で、あたしは目を覚ました。
他のみんなは昨日の肝試しが疲れたのか、まだ寝ている。


『ふぁあ…よく寝た』


起きろー、と言いたいところだが、既に合宿中のメニューは終わっているので、寝ていても問題はない。
あたしはあまり睡眠時間が必要ない体質なので、朝が早くても大丈夫だ。

ベッドから降り、洗面所で顔を洗い、髪をとかして着替えをした。

早く起きてしまったが、多分まだみんな起きていないだろう。


『…海にでも行こうかな…』





数十分後、あたしは砂浜にいた。


『やっぱ海は綺麗だなぁ…』

「…あれ…瑠衣…?」

『…?』


名前を呼ばれた方向に振り向くと、日に焼けた肌と日に焼けた茶髪を持つ少年がいた。


『…風磨くん…おはよう』


そう、海の家で知り合った須崎風磨くんだ。


風磨「おはよ、朝早いね」

『うん…早く目が覚めちゃったから、朝の海を見ようと思って。風磨くんは?』

風磨「俺はランニング!」

『へぇ!すごいね!!』

風磨「おう、さんきゅ」


へへっ、と得意そうに笑った。
その笑い方がやはり、懐かしいと感じた。

聞けば彼は、野球部に所属しているそうだ。
あたしと同学年で中学2年生の彼は、最近引退した3年生から主将を受け継いだらしい。


『キャプテンかー、拓人と日向先輩だ』

風磨「雷門のサッカー部と誠凛高校のバスケ部だったよね」

『うん、どっちもあたしの大好きなチーム!』


あたしが笑うと、風磨くんは目を細めた。


風磨「…そっか。良かった、瑠衣が笑ってて」

『…?どういうこと…?』


あたしが尋ねても答えず、風磨くんは立ち上がった。


『何でもないよ。じゃあ俺、ランニング戻るわ。またな』

『あ、うん!またね!!』


笑顔を残し、彼は走っていってしまった。


『…どういうことだったんだろ…』


あたしの心は、疑念でいっぱいだった。





別荘に戻ると、玄関ホールにはお姉ちゃんがいた。

リコ「あら瑠衣おはよう。散歩してたの?」

『うん、海に行ってた』

リコ「私ももうすぐ行くから、先に食堂でご飯作っててくれる?」


お姉ちゃんの声に、あたしはえっ、と声を上げた。
もうそんな時間だったのか。


リコ「葵ちゃんと茜ちゃんは起きてるんじゃないかしら?水鳥ちゃんはまだみたいだけど…」

『うわぁっ、早く行かなきゃ!』


急ぐと転ぶわよー、というお姉ちゃんの声を聞きながら、食堂へ走った。





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