”世界の歌姫”、烏合の衆に身を隠す。
□第1話
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手元の紙を、ニヤニヤと見つめる。
「あれれ〜、晴花さん、なんだか嬉しそうですね〜」
そう言いながら私に声をかけたのは、中学に入ってからの親友・詩織だった。
「そ、そんなことないよ!」
慌てて手を左右に振ると、詩織はふふ、と口に手を添えながら笑う。
「隠し事下手だなぁ、晴花は」
私に隠せることなんてない!なんて言いながら、詩織は空いていた私の前の席に座った。
ちょっと、その席の男子が座れなくて困ってるから。
まぁ、いいか。
「う……えと、あのね…」
私が話し出すのを、詩織は今か今かと待っている。
「及川先輩のメアド、もらっちゃった…」
「……へ」
間抜けな声を出したのは、詩織だった。
大きな目がぱちぱちと瞬かれた後に聞いた彼女の言葉に、私は笑顔になる。
「そ…そうなの?よかったじゃん!及川先輩のこと、好きなんだもんね」
「うん、ありがとう詩織!」
まだ私は、あなたを信じてた。