”世界の歌姫”、烏合の衆に身を隠す。

□最終話
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最近転校してきた、隣の席の彼女は、アイドルらしい。


おれはあんまり興味がないけど、クラスの人達にとっては興味の対象みたい。

たまにほかのクラスやほかの学年から、彼女を見に来る人もいる。



彼女は彼女に話しかける人すべてに、親切に対応していた。

殊勝な心がけだな、なんて、彼女の持つ性格と正反対の性格を持つおれは思った。



彼女とおれの席は、窓側のいちばん後ろ、彼女が窓側。

授業中にふと横を見ると、彼女は窓の外をぼんやりと眺めていた。



「………」



その目線に、少しだけ興味が湧いた。

小さなメモ用紙に、"何見てるの"とだけ書いて彼女の机に投げた。

それに気づいた彼女が驚いたようにおれを見たけど、その時にはおれは黒板を見ていた。先生に目をつけられたくないし。



"空。 今日すごくいい天気だよ"



おれの字の下にそう書いて、彼女はおれの机にそれを置いた。



(…空)



おれも見てみたけど、なんの変哲もない青空で。


彼女はどの空を見てるんだろうか、と思った。





おれと彼女の授業中の文通は続いた。

授業中じゃないと彼女はだれかに囲まれているし、おれにその中を割って入る勇気はない。


文通で、彼女は色んなことを教えてくれた。


ステージに立つ楽しさや誇らしさ、彼女のいた場所の、仲間と呼ぶべき人々の話も。





「研磨、部活行くぞ」


「…クロ。 …いま行く」


「なんかあったか? ワクワク顔してるぞ」


「べつに、してない」








【ある猫のセッターの分析】






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