黒猫の本棚、短い道のり
□元不良の先生と現不良の他校生
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銀魂高校の放課後
部活動が始まり、帰宅部の生徒が帰る頃
名前はその時間に3階の空き教室でのプリント整理をするのが日課だった
本来は職員室なのだが、窓から入る心地好い風と吹奏楽部の奏でる曲を聴きながら作業するのだ
銀魂高校卒業生でもあり、新任教師の名前はそんな穴場スポットを良く知っている
だがここ最近、妙な訪問者がいる
「せーんせっ」
どうやら来たようだ
いつの間にか窓際に腰掛けている青年は、銀八のクラスにいる神楽の兄の神威だ
しかし彼は銀魂高校の生徒ですらない
最初はとにかく驚いたものだ
何せ此処は3階でいきなり声を掛けられたのだから
『また来たのか…』
「うん」
『はぁ…』
ニコニコとした表情を崩さず、窓に腰掛けたまま、神威は何時も通り此方を見てじっとしている
何時もならそのまま放置するのだが、今日は仕事もほぼ片付いたので、少し話をしてみようと前の席の椅子を引く
ガタ
『危ないから、ここに座りなさい』
崩れる所を見たことがない笑顔は、初めてきょとん、と眼を丸く開いて驚きを表していた
そんな表情が見れるとは思わなかったので、得をした気分だ
「へえ、珍しいね」
言われた通りに前に座る神威
『たまには二者面談でもしてあげようと思ってね』
「二者面談?」
『そ。他校の君が此処にいる事とか、毎日来る理由とか?』
「いつも言ってるだろ?先生に会いにだよ」
『喧嘩はしないぞ』
「うん、知ってる」