神喰

□どうしてこうも都合よく(?)
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ヤエが出払っている病室に、ソーマと名無しさんはいた。


「………ごめんなさい…」


「もう謝るな。

この仕事に怪我は付き物だ」


何度謝ったか分からないが、名無しさんは俯いたままソーマに謝り続けていた。


利き腕に包帯をぐるぐる巻きにした状態で。


「折れてはない。直に治る」


「それは…そうだけど…」


痛々しく包帯の巻かれた自分の腕を見て情けなそうな顔をする名無しさん。

先程の任務でヘマをしてしまったのだ。



目の前の敵に集中している最中、真後ろに気配もなくコクーンメイデンが現れたのだから無理もない。

名無しさんが気付いた時にはもう遅く、コクーンメイデンの鋭い針が利き腕を勢い良く貫いた。

神経などを掠めることなく、綺麗に貫いてくれたことだけが不幸中の幸いだろう。



「はあ…しばらくは任務に出れないわね…」


「榊のおっさんには休暇届けを出しといたから安心して休め」


「準備がいいのね」


「まあな」


さてと…と、名無しさんは腰掛けていたベッドから立ち上がる。


「どこへ行くんだ?」


ソーマは向かい側のベッドに座ったまま、名無しさんを見上げた。


「どこって…自室だけど?」


キョトンとする名無しさん。

対するソーマはジッと名無しさんの利き腕を見つめる。


「その手で日常の動作が出来るのか?」


「………ぁ、」


それもそうだ。と名無しさんは納得する。


利き腕ではない方の腕は使えるのだから、多少の事は1人でこなせるだろう。

食事も、スプーンやフォークを使えば別段問題でもない。

だが、風呂や着替えは?

片手では洗う範囲が限られるし、着替えも少々大変そうだ。


「あ…アリサやシエルに手伝ってもらうわ!」


「残念だが2人とも遠征中だ」


「ぅ……、っカノンちゃんは?」


「第4部隊は防衛班と一緒に防衛任務に行っている。
1週間は帰れないとハルオミが愚痴ってたな」


「エリナちゃんは!?」


「休暇だからな。
実家に帰っている。

ちなみにウララもだ」


「ふ…フラ「フランはアリサ達の遠征、ヒバリは防衛任務について行っている」


「…」


「リッカは今日は神機のメンテナンスで手が空けられないそうだ。」


「………」


「ムツミじゃ身長差があるだろ」


「まだ何も言ってないじゃない!」


どうしてこうも女性陣が都合よく(?)いないのだろうか。

名無しさんはげんなりとしながら長い溜め息をついた。

反対にソーマはなんだか満足そうな笑みを浮かべる。


「休暇届けは俺の分も出してあるからな」


「…あとで仕事で溢れたって知らないわよ」





その後、名無しさんは腕が完治するまでソーマの執拗な介助を受けることになったのでした。メデタシメデタシ













「っそ…ソーマ…流石にトイレは……」


「任せろ」
 

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