黒バスの引き出し
□寒い夜
1ページ/1ページ
ガラガラガラガラ。
毎日毎日、文句一つ言わずにこいつは俺を乗せてリアカーを引く。
勝負の決まったじゃんけんも、信号待ちの度にやって、負けちまった、次こそはとその鷹の目を細めて笑う。
冬も深まってきて手がかじかむだろうに、今日は星が綺麗だなんて言って静かな住宅街を音を立てて通る。
「しーんちゃん、着いたよ」
「あぁ。」
じゃあ明日、迎えに来るからと高尾は笑った。
いつもいつもこの笑顔に救われている。
今日くらい褒美をあげようか。
「高尾。」
「ん?なにしんちゃ…って!あぶね!!」
「ちゃんと受け取れ」
「いきなりお汁粉投げるとか俺じゃなかったら顔面直撃だぜ!?…てかなにこれ。くれんの?」
「自販機から2本出てきた。」
「ぶはっそんな訳あるかよ」
うひゃひゃと笑う声音が耳に心地よい。
「今日はデレなんですか?エース様」
「うるさい。帰れ。」
「はいはい。じゃあまたね」
ひらひらと手を振る背中を少しだけ見送る。
明日もあの笑顔が輝けますように。