黒バスの引き出し
□HEAVEN
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いろんな人やいろんな車が通り過ぎる街並み。
青い薔薇を右手に持って、緑間真太郎は病院に向かっていた。
「…手術はまだ怖いか」
『そりゃもう!だってさ、目の中切ったりするんだぜ?』
「そうか…」
『でも…』
「でも?」
言葉を濁した高尾和成に問いかけて言葉を促した。
『手術が成功すれば、真ちゃんの顔も見れるようになるんだろ?』
電話越しなのに高尾の幸せそうな顔が浮かんでくるようだ。
「あぁ。そうだな」
『…じゃあ、そろそろ行くわ』
「あぁ。また、後で」
あんなに強気な彼が怖気付くくらいだ。相当怖いのだろう。
青になった横断歩道を渡る。
その時。
「あ、危ない!トラックが!」
他人の声が聞こえて、顔を横に向けた時にはもう、
目の前に信号無視のトラックがいた。
強い衝撃で体は吹き飛ばされ地面に叩きつけられる。
近くに転がる薔薇の花と携帯電話、そして人の悲鳴。
目の前に広がる空はとても澄み渡っていた。
最期の力を振り絞り、携帯電話に手を伸ばした。